教育委員会が贈る歴史の道調査報告書、その傑作を補完して有り余る佳作、歴史の道踏査報告書〜古老の証言集〜

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円城の辻(19)

★★★

円城の辻(えんじょうのつじ)の取扱説明書

いつの頃からか、ライダーの聖地と謳われて久しい道の駅円城。週末ともなれば県の内外を問わず単車が集い、四輪での進入が場違いと思わせるほど凌駕する。山陽方面からも山陰側からも上り勾配のピークに位置する現場は、感覚的にも距離的にも一服するには丁度良い。多くのライダー&ドライバーが日頃何気なく行き来している道でもあるが、99.9%の者が円城へ至る道筋の正体を知らぬまま、この世の春を謳歌している。何を隠そう僕もその一人だ。正確を期せば、僕もその一人“だった”。沿道一帯には旧道のそれと分かる無数の残骸が散見されるが、それらを丁寧になぞる過程で、僕の想像を遥かに超える驚くべき現実を目の当たりにする。これまで培ってきた道路感が音を立てて崩れる、それくらいのインパクトは必至の炎上、いや円城の辻の真髄を御覧頂こう。

 

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◆頂上より500m程下った地点で歩道が途切れる

峠道の頂きに設けられた道の駅は、週末になると多くの家族連れで賑わう。目的は円城白菜というブランド野菜で、行楽客が減少する秋冬に活況を呈す。シーズン中はバイクの聖地と呼ばれ、二輪と四輪の比率が同等或いは前者が上回る事もしばしば。地味な場所にありながらも、年間の利用頻度は総じて高い。

岡山市内と真庭市内の丁度中間点に位置し、下道で二時間の行程の半分であるから、一服し用を足すには程良い場所でもある。前後に見所が無いなだらかな峠道のサミットというロケーションも然る事ながら、それに県下初の道の駅という箔が大きく貢献しているのかも知れない。

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◆歩道が途切れると同時に右手に1.5車線路が派生

どの世界にも言える事だが、一番は知っていても二番は知らないというのが世の常だ。平成6年5月に開業を迎えた道の駅円城は、当時未完成であった岡山自動車道の補完的役割を担う路線で、R53と共に陰陽を連絡する重要路線であった事から、道の駅選定に於ける候補の筆頭格に位置付けられていた。

国道53号線の岡山と津山の中間に位置する、道の駅くめなんの開業が平成7年である事から、当路線が陰陽縦貫線の双璧を成していたのは間違いない。尤も3年後に全線開業を控えた岡山自動車道の代替路に過ぎないが、繋ぎの3年間のみならず今日の高頻度な利用実績から、一号の妥当性は頷ける。

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◆加茂側に比し真庭側はインチキ二車線幅と若干広い

その道の駅から真庭方面へ下り始めて間もなく、併走していた歩道が途切れる地点に、追分とも呼べる二手に分かれる交点を迎える。勿論そこには信号機はおろか青看の一つもない。一般の通行者なら気にも留めず一定の速度で走り抜けるだけの何の変哲もない在り来たりな場所だ。

ただ我々はその凡庸なスポットを見逃す訳にはいかない。歩道はある地点でスパッと途切れている訳ではない。予算不足で打ち切られたという感じではなく、ナチュラルに本線へと吸収されるが如し尻すぼみになっている。そして歩道が完全に消え失せた辺りで、枝分かれする1.5車線路が右手に延びている。

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◆営業を止めて久しい商店前の異様に広いT字路

消え行く歩道と現国道を挟んで斜め向かいに延びる1.5車線路、その両者がかつての同一路線という解釈以外に、僕は他の案が全く以て思い浮かばない。加茂側で散々目の当たりにしてきた光景が、真庭側でも寸分違わず展開している点に安堵すると共に、一定の驚きを禁じ得ない。

というのもこれまで幾度となく往来した当路線に対する率直な印象として、真庭側には旧道の痕跡がほぼほぼ皆無という認識があったからだ。しかしこうして丁寧に道跡を辿れば、それなりの成果が得られる点に改めて驚かされるし、“無い”と思い込んでいた旧道筋が現存する事に感動さえ覚える。

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◆旧道筋らしからぬ巨大T字路より1km先の頂上を望む

真庭側に於ける現国道筋の大部分は、旧道を拡幅して上書きしたものではないか、幾度となく往来して得た知見から導き出した僕の結論は、円城生え抜きの古老の証言により、遠からず当っていた事が裏付けられる。

小森温泉からは昔からバスがきよったしな

僕は道路状況から読み解く新旧路の関係性に納得すると共に、古来小森温泉からバス路線が通じていたという証言に、若干の疑念を抱かざるを得ず半ば消化不良に陥った。何故なら円城⇔小森温泉の区間が、トンデモ難路であるからだ。

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◆視界前方の高架橋下まで緩やかな直線で下る旧道筋

大きく緩やかなカーブで弧を描くゼロベースで敷設された現国道筋と併走する形で、旧道は微塵もブレずに真直ぐと盆地の割れ目を目掛けて突き進む。この一点だけを捉えれば、非常に穏やかな行程が続くように思える。しかしこの画は、円城で最も安心安全が約束された安息のワンショットを捉えたものに過ぎない。

この先に待つジェットコースターの如し斜面を豪快に滑り降りる急傾斜地とは裏腹に、峠道とは感じさせない緩勾配の直線走路は嵐の前の静けさに他ならない。視界前方に待つ広域農道の高架橋、小春日和の道程もそこまでだ。それより先は全車が、真っ逆さーまーにー堕ちてDESIRE♪状態に陥る。

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◆再び交わる新旧道交点の直前に佇む円城北停留所

その入口となる高架橋の真下に、R429の新旧道の交点がある。交点の直前には円城北停留所が置かれており、周辺には家屋が密集する他、商業施設が点在する。この付近が穏やかな頂上の北端に位置し、旧街道臭も僅かながら感じられる。

峠の加茂側ではほとんど伝わって来なかった街道臭が、真庭側ではほんのりと感じられる点は興味深い。これより急降下が始まるが、その道中には少なからず未確認旧道群が認められ、僕が唱える真庭側の旧道皆無論は根底から覆される。

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