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教育委員会が贈る歴史の道調査報告書、その傑作を補完して有り余る佳作、歴史の道踏査報告書〜古老の証言集〜 |
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円城の辻(14) ★★★ |
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円城の辻(えんじょうのつじ)の取扱説明書 いつの頃からか、ライダーの聖地と謳われて久しい道の駅円城。週末ともなれば県の内外を問わず単車が集い、四輪での進入が場違いと思わせるほど凌駕する。山陽方面からも山陰側からも上り勾配のピークに位置する現場は、感覚的にも距離的にも一服するには丁度良い。多くのライダー&ドライバーが日頃何気なく行き来している道でもあるが、99.9%の者が円城へ至る道筋の正体を知らぬまま、この世の春を謳歌している。何を隠そう僕もその一人だ。正確を期せば、僕もその一人“だった”。沿道一帯には旧道のそれと分かる無数の残骸が散見されるが、それらを丁寧になぞる過程で、僕の想像を遥かに超える驚くべき現実を目の当たりにする。これまで培ってきた道路感が音を立てて崩れる、それくらいのインパクトは必至の炎上、いや円城の辻の真髄を御覧頂こう。 |
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◆ぽっかりと空いた車一台分の空間でしばし休息する 連日メダルラッシュに沸く2021東京五輪であるが、中国山地の僻地にて震える声で“チミが代”を熱唱し、一人二輪ピックが開催されていた事実は、あまり知られていない。いつの日か“ヤブコギ”が五輪の正式競技種目として採用されるのを夢見て奮闘するオジドルが果敢に挑む。 強烈なブッシュの先制パンチを浴びるも、密度の濃い藪はいつまでも続く訳ではない。人一人分の隙間を確保しながら前進すると、ぽっかりと軽自動車一台分の空間が現れる。足元を見れば全体的にしっとりと湿っていて、植物が容易に根付けなかった様子が窺える。 |
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◆進行方向は大半が藪漕ぎ必至の猛烈な草木に阻まれる しかし安堵したのも束の間、次の瞬間には視界前方が再び閉ざされ、元道路らしさは完全に失われる。相手が枯れ草だからいいものの、これが夏草だっだらと思うとゾッとする。その抵抗たるや凄まじいもので、この時期の何倍もの苦労を強いられたであろう事は、経験上間違いないから考えただけでも空恐ろしい。 しかし枯れ草だからといって容易く通してくれる訳ではない。まず道具が無いとお手上げで、素手でどうにかなるものではない。最低でも手ノコと剪定鋏は必携で、そのどちらかが欠けるだけで、作業効率は格段に落ちる。また道具が揃っているからといって、サクサク前進出来る訳でもない。 |
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◆単車一台分の隙間をカットしながら丁寧に這い進む 単車を通す為に必要最小限の草木を取り除く訳だが、その選定作業もテキパキと進むのではなく、体力温存の為には最小のカットも已む無しで、ある程度吟味してから伐採するのが定石だ。むやみやたらに切り刻む方が余程楽かも知れないが、それでは長丁場の刈り払いには耐えられない。 10代20代の無尽蔵に等しい体力ならいざ知らず、キングカズの如しいつ何時現役を退くか分からない老兵であるから、道中いかにして体力を消耗しないかが最大のテーマで、夜のお勤めで役立たず!と言われない為にも、廃道内でヘロヘロになり帰ったらバタンキューという訳にはいかない。 |
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◆手鋸や剪定鋏がないと太刀打ちできない藪壁が連く 夜のお勤めに支障を来すくらいなら、この世界から足を洗ってもいい、それくらいの覚悟で挑んできたし、その理念は未来永劫変わらない。廃道内での疲労困憊は、絶対条件の生還を脅かす事になりかねないし、ヘロヘロになった所で熊に出くわしたら、ほぼ一巻のお終わりである。 必ずや生きて帰る、帰ったらファイト一発、この一連の流れは必然で、現場ではなるべく疲れないように配慮し、疲労を感じたら直ちに作業を中断して休憩、場合によっては即時撤退、また翌日の作業に備え早急な疲労回復に努める等の対策は怠らない。一番やってはいけない事、それはダラダラと前進する事だ。 |
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◆視界が一気に開けた所に一本の電柱が佇む 先の大戦ではダラダラと戦争を続け、止め時を見誤ったこの国は、無条件降伏という辛酸を舐めるに至った。最終局面で二つの都市に投下された核兵器は、その非人道的な行為も然る事ながら、別々の原材料を用いた実験的要素というファクトも重なり、人類史に残る大量虐殺として非難されるべき蛮行ではある。 しかし時の政権が新聞各社を通じて国民に訴えたのは、あまりにも非現実的な根性論であった。 新型爆弾、恐るるに足らず 大事なのは初期消火 |
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◆電柱の辺りだけ大型車一台分の空間が認められる 負け戦にも程がある 確かにあの時代は核の何もかもが分からなかったという側面はある。しかし問題なのは、そこに至っても尚神風が吹くと信じて止まず、ダラダラと戦争を継続した大本営の怠慢だ。引き際を見誤る経験は誰でもあるだろう。 なかなか損切りに踏み切れないという場面も多々あろう。ただそれが国家存亡の危機や、生死を分ける局面に於いては、選択の余地はない。時折富士山を軽装で上り下りする人物を見掛けるが、僕はどんな山でも登山は命懸けと本気で思っている。 |
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◆電柱の斜め向かいにひっそりと鎮座するデリネーター 特に単独行の場合は。道中は何があっても自力での下山が原則となるが、登頂ありきのゴリ押し山行は基本有り得ない。これまでにGOTO富士を幾度となくトライしているが、お恥ずかしながら一度として頂きに立った試しがない。 百発百中で挫折する。最早登山家ではなく下山家と言っていい境地に達している。いかに確実に下山(生還)するか、興味はその一点に尽きる。直感や兆候も含め、違和感を覚えた時点で間髪入れずに即時撤収即時撤退が原理原則となる。 円城の辻15へ進む 円城の辻13へ戻る |