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教育委員会が贈る歴史の道調査報告書、その傑作を補完して有り余る佳作、歴史の道踏査報告書〜古老の証言集〜 |
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トップ>旧道>岡山>畑ヶ鳴峠 |
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畑ヶ鳴峠(15) ★★★ |
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畑ヶ鳴峠(はたごなるとうげ)の取扱説明書 世の中には地図に刷られている峠名と現地に掲げられている峠名がマッチングしない案件が存在する。国道484号線の畑ヶ鳴峠もその一つだ。ひとつの峠に複数の呼称があるのは然程珍しい訳ではない。峠の前後左右で名称が異なるのは何等不自然ではないし、どれが間違っていてどれが正しいとも言い切れない。世に出回っている地図の原本となる国土地理院の地形図は、2018年現在山の神峠と謳っている。その為市販の地図はそれに従い山の神と刷り込んである。現場は取るに足らない平易な峠で、未来永劫歴史の道踏査報告書で取り扱う日は来ないであろう、そう思い込んでいた、つい最近までは。ところが無視する訳にはいかない驚愕の事実に直面する。全ては知る人ぞ知る秘境カフェ「ナップビレッジ」に始まる。ここに立ち寄ったが最後、単なる峠越えに終始しないコアな世界へと引き摺り込まれていく。本来は酷道として名高い畑ヶ鳴峠であるが、その殻を打ち砕くに十分な破壊力を秘めている同区の真髄を御覧頂こう。 |
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◆雑草閑散期に於いても単車での踏破は容易でない 脱出後に現道からこの道の様子を探ってみたが、やはりその存在自体を把握するのは容易でない。廃道踏破にチャレンジする車両でもあれば別だが、移動体のない藪道は深々とした森と完全に同化しており、微動だにしない杉木立の一枚岩は、般ピー目線では森そのものにしか映らない。 正体が分かっている自分目線でも単なる森にしか映らないのだから、そこに車道が横たわっていようなどとは想像すら出来なんだ。従って藪道でもがき苦しむ僕を気にする車両など皆無で、軽快に駆け抜ける車両の走行音に一瞬やべっ!と身を屈めるも、対岸からはまるで見えていないに等しい。 |
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◆廃道内からは常に新道の様子並びに通行車両を把握 旧道からは現道の様子がはっきりと見て取れるが、あちら側からは目を凝らしても何も窺い知る事は出来ない。現国道で耳を澄ませばエンジン音をキャッチ出来るかも知れないが、それとて林業従事者が使用するチェーンソーの音と解釈する可能性が大だ。それくらい現場は道路があるようには見えない。 普段からこの路線を日常的に行き来している僕は、対岸へと通じる橋の存在によって、対岸に車道があるのでは?という疑念があるにはあった。但しそいつはすぐに行き止まる支線林道であるとか、一般には使われない作業路のような類いで、特に食指が動くものではなかった。 |
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◆廃道内では年代モノのゴミを複数箇所で捉える しかしこうして峠道を精査する事によって、この藪道が一般市民にとって馴染の薄い非実用路などではなく、普段の生活に必要不可欠な生命線であるなど、全く以てビックリポンな結果に驚きを隠せない。この区間のみにスポットライトを当てたなら、旧道という解釈には至らなかったかも知れない。 しかしここに至るまでの過程で捉えた旧道の残骸、或いは擦れ違い困難な現狭隘区と比較して、大きく違わぬ車道の姿が見て取れ、二車線化を断念し対岸にゼロベースの路を新設というケースは二、三箇所に止まらない。この峠道では必要とあらばそのような措置が講じられたのだ。 |
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◆かつての路上に根付いた若木を避けつつ慎重に前進 この藪道は間違いなく現国道の旧道である。その根拠の決定打となったのが、廃道区間終了間際に垣間見た足元の状態だ。進入早々未舗装のそれと信じて疑わなかった枯葉の下には、なんとアスファルトが隠れていたのである。あれだけ通り抜けに苦労した激藪道は、まさかまさかの舗装路であったのだ。 嘘だ!と思い枯葉の一部を避けてみると、黒光る硬質の路面が露わとなり、未舗装に終始する路でない事がはっきりとした。廃道区間を抜け出ると四輪が転回可能な広場となり、その先には大柾林道のゲートが立ちはだかる。藪道が純粋な未舗装であれば、元林道という見方も出来た。 |
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◆視界が急激に開ける広場は大柾林道との分岐点 しかし当の大柾林道はのっけから砂利道ときている。今辿ってきた藪道がかつての大柾林道の一部であるならば、舗装の必要性は全くないに等しい。何故ならこの界隈に派生する支線林道はどれも起点から未舗装であるからだ。林道導入部の一部舗装というのは、昨今の予算事情からも現実味に欠ける。 だが藪道がかつての幹線道路であれば話は別だ。生活道路とあらば惜しみなく予算を投じるだろう。勿論物事には順序があるから、その昔から舗装されていたとは思わない。あくまでも晩年は舗装されていたという解釈に留まる。しかしそれこそが藪道が元幹線道路たる証左だ。 |
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◆現道に繋がる大柾林道との交点は廃道の終点でもある 藪道の視界が開けた瞬間、左手には大柾林道のゲートを捉え、右手には現国道へと繋がる橋が掛かる。このY字路から想像される一時代前の様子はこうだ。峠を越してきた車両は狭い一本道を辿り、欄干の無い橋で自然と対岸へと導かれ、大柾林道とのY字路を迎え、再び橋梁を一跨ぎし軌道修正する。 後年対岸にゼロベースで構築された二車線の快走路が出現し、二度に亘る川渡りをせずに済むようになったとさ。舗装済の廃道区間を見る限り、そのように読み解くのが妥当であろう。廃道区間は林道じゃねーよと主張するように、最初から最後まで一貫して舗装されている。 |
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◆旧廃道の出入口でもある現国道と大柾林道の分岐点 出口から眺めても対岸に旧道があるようには見えない。だが不可思議な足元の様子に感付けば、そこが何たるやは自ずと理解するだろう。かつては離合困難な1.5車線路が、川の左右を行き来しながらのらりくらりと伝っていたのだ。 新旧合流地点に幹線跡との断定に至る明確な証拠は見当たらない。だが廃道の前後を繋ぐコンクリ橋と舗装済の路とが旧道のそれと僕に訴える。そして連続する旧廃区に於いて、遂に明確な物証を掴む事となる。 畑ヶ鳴峠16へ進む 畑ヶ鳴峠14へ戻る |