教育委員会が贈る歴史の道調査報告書、その傑作を補完して有り余る佳作、歴史の道踏査報告書〜古老の証言集〜

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静狩峠(14)

★★★★

静狩峠(しずかりとうげ)の取扱説明書

その昔、猿留山道及び雷電山道と並び蝦夷地三大難所に数えられた礼文華山道。その行程は長万部から豊浦にかけての気が遠くなる程の長大山道で、一般には筆頭格と目される礼文華峠のみが取り沙汰されるが、礼文華山道とは大小連なる複数の峠の総称であり、その全体像を掴むには個々の峠を丁寧に精査するしかない。それぞれが距離も高低差も難易度も異なる多様性に富む峠越えの中で、僕が本気で死を意識し一枚の写真も収められなかった峠がある。それが静狩峠だ。読んで字の如しサイレントハンターはトラップに嵌まり衰弱する僕を静かに見守っていた。夕刻迫る発狂寸前の渦中でふと我に返った僕は、間髪入れずに敵前逃亡を図る。あれから十余年が経ち機は熟した。あの日あの時あの瞬間の忌まわしい借りを返すと同時に、返す刀で礼文華山道の全貌を白日の下に晒す。

 

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◆直線で刈り払い済なのに視界前方の様子が有耶無耶

安部氏が提唱する全員皆殺しに関する詳細な記述はなく、どのような手法か使われたかについては想像する以外に手はない。あちらの世界に精通する氏と我々では想像の範疇に雲泥の差があり、裁判沙汰の経験すらない素人には限界があるが、ひとつの仮説として囚人のその後を検証してみたい。

梯子を外され関係者全員を道連れにしようと奮闘中の籠池氏の籠池劇場によって、官公庁は不都合な資料は始めから存在しない、或いは悉く廃棄、表に出しても全部黒塗りという御約束の手法で、御上が間違いを犯すはずがないという建前を死守したのは周知の通りである。

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◆手を煩わせる倒木が連続して現れ楽をさせてくれない

いつの時代も都合の悪い資料は公にはならない前提であるから、官が公表する資料のどこまでが真実かは定かでないが、例えば樺戸集治監では拘留中の死亡者数1046名に対し、遺族の下に還った遺体は僅か22例に留まる。その22名も非公表につき定かではない。

その数字を鵜呑みにすれば22名の末裔を辿れなくはない。あらゆる手段を講じれば何等かの手掛かりが得られるのではないか?そう考えて氏は東京を発ったはずだが、実際には何の手掛かりも得られなかった。安部氏の人脈やネームバリューを駆使すれば、紹介に次ぐ紹介でどこかに辿り着きそうなものだ。

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◆倒木群の撤去で体力を消耗し以降は適当に刈り払う

しかし実際にそうはならなかった。中央道路建設では投入された1200名の人員に対し212名が死亡し、生存者千名弱の実に九割超にあたる914名が、脚気を筆頭とする何等かの疾患を抱えたと記録されている。工事従事者の大方が過酷な労働に端を発する病を発症したという現実は見逃がせない。

安部氏の言う全員皆殺しとは銃殺や斬殺であろうか、それとも毒殺や撲殺であろうか?或いは自由刑になる前の江戸時代宜しく絶海の孤島への島流しであろうか?いずれにしても大量虐殺を履行するには実行役にそれなりの手を煩わせる訳で、秘密裏に履行出来たとしても非常に後味の悪いものになる。

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◆藪道では珍しく下り勾配が鮮明な貴重な区間

資料改ざんに史料廃棄、証拠隠滅に緘口令を敷いたとしても、どこで情報が漏洩するか分からない。果たして御上がそのような危ない橋を渡るであろうか?と考えた時、看守に逆らうとか脱獄を繰り返す等で、仕方なく斬殺したとか何等かの言い訳というか大義名分が欲しい。

それにしても中央道路建設に携わった囚人の生存者は約千名に及ぶ。監舎内で暴動が起き鎮圧に当ったにしても、誰がしかの手を煩わせずに大量殺戮するのは不可能であるし、そもそも何で千人も殺す必要があったの?と逆に実行側の容疑が問われかねない。それは余りにもリスキーな選択肢だ。

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◆木々の隙間に草木の生えない垂直の急斜面を捉える

何等かの大義名分が立つ上に、極々短期間に大量の人間を一括処分する、しかも実行役の手を煩わせずにたいした費用も掛からない、そんな安い・早い・旨い吉野家のキャッチフレーズにも似た夢の殺り方などあるのだろうか?ある。僕が想像し得た囚人の殺り方は、2012年2月14日に現実のものとなった。

ロイター通信によると(報告書史上初のマジロイター:ここ大事)中米はホンジュラスの刑務所で14日未明に発生した大規模な火災は、少なくとも357名の囚人が死亡、犠牲者は更に増える見込みと報じている。一見すると単なる火災事故のようだが、どうやらそうではないらしい。

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◆勾配が感じられないほとんど平坦な横這いの藪道

表向きは漏電による事故となっている。んがしかしこの一件には幾つかの疑惑が囁かれている。ひとつは囚人が故意に火災を起こし、ドサクサに紛れて逃亡を図る計画的な事件。また日頃から敵対する看守と囚人のどちらかが恨みから放火したとの指摘もある。そして最後に最も恐ろしいのがこれだ。

政府主導による経費削減、所謂囚人減らしである。豚箱に拘束され逃げられないのをいい事に、在庫一掃セールを行ったのではないかというのである。舞台は治安の悪さで世界最恐と謳われる国家であるから有り得なくはない話だ。もしこれが事実であるならば、事実は小説よりも奇なりである。

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◆明らかに人工的に削られた鉱山のような斜面を捉える

ホンジュラスの一件が記録に残る世界最悪の刑務所火災と報じられているが、100年以上も前の日本でこれと同様の事故(事件)が発生していた可能性を、実は誰も否定出来ないという現実がある。

但し僕が導き出した結論は、火災による大量殺戮ではない。もっと簡単にもっと楽に不用品の在庫一掃を行う方法がある。しかもローリスク且つノーマネーでフィニッシュの虎も驚くとっておきの方法だ。恐らく時の政権はその方法で殺ったはず。

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