教育委員会が贈る歴史の道調査報告書、その傑作を補完して有り余る佳作、歴史の道踏査報告書〜古老の証言集〜

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礼文華峠(2)

★★★★

礼文華峠(れぶんげとうげ)の取扱説明書

猿留山道及び雷電山道と並び蝦夷地三大難所に数えられる礼文華山道。長万部から豊浦にかけて大小連なる複数の峠の総称で、それぞれが距離も高低差も難易度も異なる多様性に富む峠越えの中で、筆頭格にして総大将と目されるのが礼文華峠である。かつては死を意識するほどの恐ろしく逝かれた山道であったが、歴史道として再認識されて以降整備が著しく、今では尤も探訪し易い楽勝コースと化している。それが良いのか悪いのかは人それぞれであるが、存在自体がほぼ否定されたに等しい完全廃道時代から、有志による刈り払いが実施された浅藪時代を経て、ハイキングコース化した現在に至るまで武四郎宜しく向こう三度に亘り路の変遷を垣間見た僕なりの視点で、この峠の酸いも甘いも語り尽くす。

 

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◆巨大な擂鉢状の谷を一跨ぎする高規格な礼文華橋

礼文華峠は現道のみの区切りで述べれば、道道609号礼文停車場線及び道道344号白井川豊浦線との交点より西進し、道道266号大成黒松内停車場との交点に至る区間が対象となる。勿論それはかつて礼文華山道と呼ばれた北海道随一の長大山道の一部に過ぎない。

そこは函館と室蘭を結ぶビジネス路線でもあるから、最新設備への刷新が急がれる訳だが、平成に入ってから当該区間は急激な進化をみせる。道中には二つのトンネルが認められるが、1990年代には順次新トンネルが竣工し、平成も二桁になる頃には新道への移設が部分的に開始される。

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◆礼文華橋と対を成す平成13年竣工の小幌橋

平成13年竣工の礼文華橋及び小幌橋の完成により、新トンネル&高架橋の平成新道は一応の日の目は見たが、今この瞬間も礼文地区の登坂車線の追加敷設事業を目の当たりにする限り、考え得るベストな状態に対しては未完成であり、平成新道は今日現在発展途上にあるのは確かだ。

しかしながら複数の峠で構成される礼文華山道の中では、礼文華峠区が完成度で頭一つ抜けているのは紛れもない事実で、ほぼ全区間でトレーラー同士の相互通行を許す幅広道を実現している。但し前後の静狩峠とチャシ新道が一時代前の規格のままで、性能をフルに発揮出来ていないのが実情だ。

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◆小幌橋より直線的に上り詰める道中で行政界を迎える

静狩隧道も大岸隧道も3.9mの高さ制限並びに3.0mの車幅制限がかかっており、どちらか一方でもオーバーする車両は通行違反となる。迂回路は長万部から倶知安へ出て喜茂別経由で苫小牧に至る壮大な経路で、特殊車両のドライバーにとって平成新道は完成していないのも同然だ。

ただ管理者側のヤル気の無さにも同情の余地がある。礼文華山道を克服する術が他に見当たらない、つまり国道37号線しかないのであれば、国の直轄事業にして早期実現を訴えるなどの手もあるが、それよりも遥かに利便性が大の高規格道路が出現する。併走する道央自動車がそれだ。

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◆行政界とは若干距離を隔てる現道の礼文華峠サミット

礼文華山道全域に分布する隧道はどれも昭和40年前後の竣工で、時代が平成に切り替わる頃には四半世紀を経たベテランとなっており、十余年もすれば老朽化云々で問題になる事は、関係者の誰もが薄々感づいてはいたはず。しかし抜本的な対策を講じられる事なく今日に至ったのは偽らざる事実である。

平成の新トンネルが竣工したのは礼文華山道全体で僅かに二洞。礼文トンネルと礼文華トンネルの二つに終始しており、管理者側のヤル気の無さは一目瞭然だ。それもこれも在来国道を遥かに凌駕する高規格道路の敷設が予め決まっていたからで、これが関係各所のヤル気を大いに削いだのは間違いない。

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◆旧道を踏襲しない盛土により構成された現在の国道

どーでもいいじゃん、なるようになるさ!

このヤル気の無さは新幹線開業当時の東海道線に似ている。在来特急の到達時間を一分でも縮めんと日々奮闘している関係者を尻目に、物凄いスピードで追い越して行く次世代の高速鉄道が出現したのである。

どうやっても勝ち目のない新幹線の出現により、それ以上の設備投資は意味を成さなくなる。維持や規模縮小程度ならまだマシで、廃止まで検討されたのは言うまでもない。事実地方の新幹線と並走する在来線は、第三セクターもしくは廃止の憂き目に遭っている。

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◆御多聞に漏れずV字曲線のボトムに照準を合わせている

札幌圏外の北海道の高速道路は、どれも熊と鹿しか通らないと揶揄され、無駄な公共事業の代名詞として取り沙汰されるが、世間の厳しい目を回避する為に意図的に国道を整備せず、ドライバーには積極的に高速道路を使ってもらう事で、通行量を増やす作戦と捉えられなくもない。

だとしたら高速道路しか選択肢のない車種のドライバーにしたらいい迷惑であるが、実態は予算配分の都合で現状にて何とか凌いでいる区間は後回しになっているだけなのであろう。だが何もしないとそれはそれで叩かれる。なので日々ちょっとずつ前進しているという既成事実が重要だ。

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◆上大成の道道266号大成黒松内停車場との交点

国会の牛歩戦術ではないが、本年度はトンネルをぶち抜き来年度は橋を架け替え、再来年には登坂車線を設けてという風に常に動いている姿勢をみせるのは有効で、利用者目線ではいつかは全線高規格化の希望が持てる。

それが何年何十年とかかろうが、いつかは成就すると思わせればいいのであって、ダラダラと事業を継続しどこまでも引っ張れ〜な作戦下で、礼文華ヒットパレード大作戦なる機密文書が流布しているのではないかと僕は睨んでいる。

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