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教育委員会が贈る歴史の道調査報告書、その傑作を補完して有り余る佳作、歴史の道踏査報告書〜古老の証言集〜 |
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トップ>廃道>北海道>大岸峠 |
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大岸峠(22) ★★★★★ |
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大岸峠(おふけしとうげ)の取扱説明書 北海道新幹線開業のニュースが世間の耳目を集めているが、JR北海道が入念な最終チェックをしている時分に、僕は最初で最後の一大プロジェクトに取り組んでいた。猿留山道及び雷電山道と並び蝦夷地三大難所に数えられる礼文華山道の完全制覇である。単車による走破、それも豊浦から長万部まで全て旧道を伝い、しかも半日で一気に駆け抜けるという壮大且つ無謀な試みで、計画の段階で大岸⇔豊浦間が最大の懸案事項と目された。海のものとも山のものとも分からぬ未踏区は、難易度は高いが攻略出来なくはない。出足平峠・豊浜洞・湯内峠の長大山道以来の大長編スペクタクル第一弾、オフケシ峠の衝撃・今宵解禁。尚今度こそR8での峠越えを立証すべく最善を尽くす。下町ロケットアウディ計画トラストミー編、始まります。 |
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◆パッと見は一車線であるが有効幅は二車線をキープ 曲率半径20m前後の豪快なヘアピンカーブを幾度か経験した後、急激に視界が開けると同時に久しく人の生活臭に触れる事となる。エンジン草刈機で雑草を刈り払っている音が微かにこの耳に漏れ届き、思わず泣きそうになる。そりゃそうだ、生還の望みが断たれるような場面に陥った直後なのだから。 これだけ整備された道だから人が居て然るべきである。普通の感覚なら物音で感動も糞もない。ただ点ではなく線で追って来た者にとってそのノイズは勇気百倍で、普段であればうるせー!と怒鳴りたくなる騒音も、この時ばかりは1/fゆらぎ込みの讃美歌にしか聞こえない。 |
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◆奥に第一人家が控える最後のヘアピンカーブ かなりの神経戦を強いられ身も心もズタボロで、おかわり君でもノーサンキューと断ってしまうほど今は廃道の事は何も考えたくはない。そこに降って湧いた喧騒な人工音に心底救われた。近くに人が居る、ただこれだけでどれだけ救われる事か。例え第一村人が世紀の凶悪犯でも今の僕には善人の鏡に映るだろう。 結論から言うとここが最後の大反転となる。北側斜面を九十九折で一気に滑り下りた訳だが、奥に映るポツリと佇む一軒家がヘアピンカーブの終わりを告げる。ここも例外無く内側外側共にたっぷりの余白があり、トラックの相互通行シーンを思い浮かべても全くと言っていいほど違和感は無い。 |
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◆高速道路と並走する形で第一人家前のT字路を迎える 最終コーナーを回り込むと長い長い直線コースに入る。正確を期せば小刻みに左右へ振れてはいるが、九十九折を経験した直後の者に言わせれば誤差は許容範囲で、ほぼ直線コースと言っても差し支えないレベルの見通しの利く道だ。その右手は厳重な金網で仕切られていて、同じ森であっても人間も動物も容易に行き来する事は叶わない。 それが現代社会を象徴する交通網の砦であると気付くのにそれほど時間は掛からない。第一村人に聞き取りを行っている最中も時折辺りに怪音が響き渡り、普段ならうるせ〜な〜としか思わない異音も、この時ばかりはモーツァルトでも聞いているように非常に心地良いBGMでしかなかった。 |
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◆ボックスカルバートで道央自動車道をアンダーパス 喧騒音の正体、それは勿論道央自動車のそれである。ボックスカルバートによってアンダーパスする砂利道は、本来の道筋より若干軌道を逸している。前後の線形から導き出される高速道路の敷設以前の姿は、恐らくかなり先まで見通せる直線路であったものと思われる。 何等かの理由により従来の未舗装路はルート変更を余儀なくされ、道路公団の都合に合わせて改変された。その結果直線道路は過去のものとなった。しかし長い直線の片鱗は今も垣間見える。それでは高速道路によって分断された長大山道の現役当時の様子を今に伝える貴重なシーンを御覧頂こう。 |
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◆現役時代を彷彿とさせる見通しの利く幅広の直線ダート ドーン! 見よ、これが現役時代を彷彿とさせる長い長い直線のフラットダートがいまだ健在の希少な区間である。これがそっくりそのまま当時のダートだとは思わない。しかし現状は当時のものと遜色ないであろう事は村人の証言からも頷ける。 第一村人は語る、我々がここに来た当時と道路状況はほとんど変わらないと。居住者は余所からやってきて地元生え抜きではない。しかし高速道路の敷設以前の様子は承知していて、過去と現在は全く変わらないのだと言い切る。 |
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◆まるでマカダム舗装を施したかのような硬質な路盤 今でも軽自動車同士であれば楽に擦れ違え、普通車同士でも低速で慎重を期せば大概の場所で離合が叶う。更に付け加えれば両脇には50cm程度の余白があり、現役時代はその部分も車道として活用されていたはずで、そうなると直線の全幅は5m前後に及び大型車同士の擦れ違いも見えてくる。 現状はあくまでも現代の交通量に合わせて縮小された格好で、4m前後の幅広ダートではあるが本来であればもう一回り大きい幅広道であったのは間違いない。昔の地図で言えば極太の二重線で描かれる大の付く幹線道路であり、それ相応の使命を課せられた重要路線である事は現況からも疑う余地がない。 |
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◆長大山道を語る上で絶対に外せない運命の五差路 足元の路盤は舗装路のように硬く、バラスを撒いただけの見せ掛けの砂利道とは訳が違う。マカダム舗装を施したかの如し硬質な砂利道は、当山道の本質に迫る重要な分岐点へと滑り込む。そこは五本のダートが一堂に会す五差路になっている。 砂利道愛好家にとってはどっちに進むか悩ましい贅沢な場面だが、五方向に分かれる砂利道の二本が異色の経歴の持ち主で、異なるジャンルの路線がクロスオーバーする超絶ポイントである事に、この時の僕はまだ気付いていない。 大岸峠23へ進む 大岸峠21へ戻る |