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教育委員会が贈る歴史の道調査報告書、その傑作を補完して有り余る佳作、歴史の道踏査報告書〜古老の証言集〜 |
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トップ>廃道>北海道>大岸峠 |
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大岸峠(18) ★★★★★ |
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大岸峠(おふけしとうげ)の取扱説明書 北海道新幹線開業のニュースが世間の耳目を集めているが、JR北海道が入念な最終チェックをしている時分に、僕は最初で最後の一大プロジェクトに取り組んでいた。猿留山道及び雷電山道と並び蝦夷地三大難所に数えられる礼文華山道の完全制覇である。単車による走破、それも豊浦から長万部まで全て旧道を伝い、しかも半日で一気に駆け抜けるという壮大且つ無謀な試みで、計画の段階で大岸⇔豊浦間が最大の懸案事項と目された。海のものとも山のものとも分からぬ未踏区は、難易度は高いが攻略出来なくはない。出足平峠・豊浜洞・湯内峠の長大山道以来の大長編スペクタクル第一弾、オフケシ峠の衝撃・今宵解禁。尚今度こそR8での峠越えを立証すべく最善を尽くす。下町ロケットアウディ計画トラストミー編、始まります。 |
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◆この付近一帯をピークに路は下りへと転じる 落ちたら即ゲームオーバーの危うい路肩すれすれを走らされ少々肝を冷やしたが、その後はこれまでの苦行が何だったのかと腹が立つほど大人しくなり、挑戦者に対し執拗に牙を剥く現場はすっかり鳴りを潜めた。一帯は嵐の前の静けさ宜しく不気味なほどの静寂に支配されている。 路肩より先はどこもかしこも急崖にて空を切っている状態にあったが、今やそれも足を踏み外してもOK牧場の軟斜面へと変わりつつある。変化はそれだけに止まらない。海が近くて遠い感じがするのだ。噴火湾の水面が捉えられないとか、波の音が聞こえないなどのはっきりした違いではない。 |
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◆進行方向右手の2m幅の笹藪が全て元車道と確認 潮の香りが途絶えたというか、海岸線独特の肌がべたつくような感じがなく、森林独特の爽やかな空気が漂っているのを肌で感じた。どこかで唐突に切り替わった訳ではなく、気が付けばそうだったという点で、環境はある地点から少しずつ変化していたのかも知れない。 危な気ないエリアに移動した感もそうだが、ここにきて道路規格にも大きな変化が現れる。僅かだが路が下りに転じているような気がしてならない。それはつまりこういう事だ。 当現場付近一帯がサミット |
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◆緩い勾配だが明らかに下り坂と分かるショット 次の場面でそれは不確かなものから決定的なものとなる。見てくれ、この緩勾配の右カーブを描く浅藪道を。画面奥から手前へと路は明らかに緩い下り坂となっている。それは挑戦者が意識するかしないか程度の微妙な高低差ではあるけれど、廃道ジャーナリストとして見逃してはならない勾配だ。 現場の最前線にいた僕にしか分からない感覚的なものを多分に含んではいるが、このショットはそれを補って余りある決定的な瞬間を捉えている。下り坂はそれほど長くは続かない。正直100mもなかったのではないかというくらい短く且つ曖昧なものだ。だからこそこのショットの存在は貴重だ。 |
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◆藪密度が尋常でない区間もあるが道跡は平然と続く 緩くて短い下り坂への印象は限りなく希薄で、単なる思い込みと言われても仕方ない側面はある。証拠写真無くしては全く以て説得力に欠けるもので、下り坂であったと言えばそうだし、高低差ほぼゼロの平坦路であったと言えば、それで押し切れる感じもする。残念ながらその程度のものだ。 当時の記憶と画像を擦り合わせながら顧みると、どこかでピークを打っていたとの解釈が妥当であるが、それはこのまま下り一辺倒もしくは横這いの路が続く場合で、あくまでも条件付且つ憶測に過ぎない。ただ現実として山道は一度も跳ね上がる事なく西進している。 |
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◆頭上の2m幅の空間が鮮明となっている樹林地帯 今でもどこがピークであったのか判然としないし、本当に頂上というものが存在したのかさえ不確かで、大岸と豊浦の間に峠アリ!と声を大にして言えないのは残念ではある。しかしそれ以上の収穫が得られんとしているのもまた事実。当山道は限りなくかつての生命線である可能性が高まっている。 何故そう言い切れるのか?それは確実にどこかへと抜けていると思われるからだ。この道にはこれまでと違って明らかな変化が生じている。パッと見の印象だけでは分からないであろうが、豊浦側の導線となった側溝現場までの雰囲気によく似ているのである。廃道後に拓かれた感じがしてならないのだ。 |
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◆深藪だが再開拓された雰囲気を漂わす解放的な区間 タイヤ痕が認められるとか四輪一台分の空間があるとかはっきりとした証拠は無い。ただ印象として一度ないし幾度かは必要に応じて拓かれているという感じがする。それはあくまでも僕の主観に過ぎないのであるが、廃止後に何度か息を吹き返した感じがしてならないのである。 全くの手付かずであったという訳ではなく、何等かの理由で山道は拓かれている。場合によっては車両が進入した可能性すら有り得ると考える。それに付随するかも知れない物的証拠を視界前方に捉える事で、僕はついつい現場で小躍りする。そして迷わずそいつに向かって小走りで駈寄る。 |
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◆解放区を印象付ける存在感のある奇妙なオブジェ 見てくれ、この人工的な造作物に植物が絡み付いたかのような見応えのあるオブジェを。電灯や標識に植物が纏わり付いた奇妙なオブジェを見掛けるのは珍しくない。僕はこの異物をその類であると確信する。 しかしそれが天然の樹木であると知ると膝から崩れ落ちた。何等かの人工物という拠り所を期待していた僕にとって、その時の絶望感たるや半端無い。だが同地点にはゴールを期待させる遺留品が存在した。僕はまだそれに気付いていない。 大岸峠19へ進む 大岸峠17へ戻る |