教育委員会が贈る歴史の道調査報告書、その傑作を補完して有り余る佳作、歴史の道踏査報告書〜古老の証言集〜

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大岸峠(7)

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大岸峠(おふけしとうげ)の取扱説明書

北海道新幹線開業のニュースが世間の耳目を集めているが、JR北海道が入念な最終チェックをしている時分に、僕は最初で最後の一大プロジェクトに取り組んでいた。猿留山道及び雷電山道と並び蝦夷地三大難所に数えられる礼文華山道の完全制覇である。単車による走破、それも豊浦から長万部まで全て旧道を伝い、しかも半日で一気に駆け抜けるという壮大且つ無謀な試みで、計画の段階で大岸⇔豊浦間が最大の懸案事項と目された。海のものとも山のものとも分からぬ未踏区は、難易度は高いが攻略出来なくはない。出足平峠・豊浜洞・湯内峠の長大山道以来の大長編スペクタクル第一弾、オフケシ峠の衝撃・今宵解禁。尚今度こそR8での峠越えを立証すべく最善を尽くす。下町ロケットアウディ計画トラストミー編、始まります。

 

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◆道央自動車道のボックスカルバートを潜り抜ける旧道

豊浦には全道民が既知のメジャーな観光名所は一つも無いが、知る人ぞ知るマイナーな観光地が二つある。ひとつは鮭の遡上シーンがガラス越しに見られるインディアン水車公園で、もうひとつが豊浦全体を一望出来る噴火湾展望公園である。後者の出入口は思いっきり国道37号線の新旧道交点に被っている。

当報告書では山道全体の起点を道の駅とようら付近としているが、それは鉄道とリンクさせた交通史的観点からそうしたまでで、純粋にこれより挑む山道をクローズアップするのであれば、起点は噴火湾展望公園の十字路に設定するのが妥当だ。そこが本格的な山岳道路の入口となる。

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◆噴火湾パーキングエリアの外側をぐるりと回り込む

市街地を抜けてきた旧道は室蘭本線との立体交差を経て、真北へ向け山肌の急斜面を一目散に駆け上がる。豊浦隧道を潜り抜けた直後の現国道とは信号機の備わらない平面交差でやり過ごし、その直後には道央自動車道のボックスカルバードで擦り抜ける。この時初めて親子三代競演を果たす。

高速道路を当たり前の様に普段から利用する者は、恐らく豊浦町と聞いて思い浮かぶ唯一のものが噴火湾パーキングではなかろうか。その足元を国道37号線が付かず離れずで並走し、実はその噴火湾PAをぐるりと取り囲む一般道が、国道37号線の旧道である事実をほとんどの道民が知らずにいる。

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◆180度反転する第一ヘアピンで一気に高度を稼ぐ

それを知ったところで何の役にも立たないし、何等かの実益に繋がる訳でもない。ただ道を踏み外すきっかけにはなる。それが損か得かは別の話で、万が一それにのめり込んだ場合、般ピーが思い描く人生の軌道から大きく逸脱し、転覆しかねない恐れがあるという点で、ゼロリスク派には全くオススメ出来ない。

道央自動車道をアンダーパスした直後に迎えるヘアピンカーブも、かつては1.5車線幅のフラットダートでエンジンが悲鳴を上げながら上り下りしていたのかと想像するだけで興奮を禁じ得ない。PAで一服しているドライバーの十中八九は無関心で、大方は噴火湾を眺めつつこの世の春を謳歌している。

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◆高速道路と並走するもイタドリの群生に阻まれる

その陰で噴火湾PAの裏側を密かに駆け上がる怪しい単車が一台。まるで忍者の如し背後から忍び寄る。高密度のイタドリの御蔭で彼等は僕の存在に全く気付いていない。逆に僕の位置からも人の声は届くも人々の姿は確認出来ない。隣り合わせでありながら二つの路線は互いを認識する事が叶わない。

それもこれも並走する路線同士の高低差によるもので、山の斜面を一定の高さで横切る高速道路と、山肌を直登に近い形で駆け上がる路との乖離が激し過ぎるからだ。現国道と高速道路は一部区間で互いを認識出来るが、流石に旧国道となるとそう簡単ではない。

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◆曲率半径15m前後で馬車道の様相を呈す第二ヘアピン

そもそもこの路線自体を旧国道と結論付けるのは、般ピーにとっては至難の業だ。案内のひとつも無いこの道をどうやって国道37号線の旧道と割り出すというのか?地元生え抜きでも定年間近の者より上の世代でないと知り得ないこの道の素性を確かめる術はほとんど無いと言っても過言ではない。

事実地元民の50代のおいちゃんやおばちゃんに聞き取りを行ったところ、トンネルの前はどこを通っていたんだろうね?ハハハッ!と返される始末。年配者でも昔の移動はほとんど汽車だったから分からないというのが実情で、残念ながらこれより挑む山道の詳細は掴めていない。

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◆ヘアピンカーブの先端より枝分かれする怪しい藪道

従って僕も半信半疑でここに至ったというのが偽らざる事実で、線形からは国道37号線の旧道でほぼ間違いないという自信は確固たるものあるが、それがいつ何時足元から崩れるやも知れぬ不安定さを内包している点は否めない。そのピンチが早くも現実のものとして目の前に現れる。

本格的な山岳道路になって迎えた第二ヘアピンで二者択一を迫られたのだ。曲率半径15mのヘアピンカーブで180度反転するのが本筋なのか、それとも直進気味に怪しい藪道へ突っ込むのが本線なのかの二択で、僕はその場に立ち止まり大いに悩んだ。何故なら直進の路が本線には見えないからだ。

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◆第二ヘアピンより真直ぐに延びる浅藪の一車線路

見てくれ、この薄汚れた怪しい藪道を。現在の国道からはとても想像出来ないみすぼらしい容姿で、同じ国道とは思えないし両者はどうやっても重ならない。それに対し上昇一途の路は馬車道の様相を呈し、安心安全の舗装路で上を目指している。

叶うならもう少し上を目指したい。しかしそれが許されない差し迫った事情があった。この年は天候不順につき虱潰しをしている時間的余裕がないのだ。それに勘ピューターが安心安全が売りの舗装路の続きをエラーで返してきたのである。

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