教育委員会が贈る歴史の道調査報告書、その傑作を補完して有り余る佳作、歴史の道踏査報告書〜古老の証言集〜

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太櫓越峠(21)

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太櫓越峠(ふとろごしとうげ)の取扱説明書

渡島半島の東側を南北に走る海岸線は、我が国で五番目に重要な路線にして、北海道随一の幹線である事に異論の余地はない。その東海岸線を陽とするならば、瀬棚と江差を結ぶ西海岸線は陰となる。山陽道と山陰道の例を出すまでもなく両者の交通量には決定的な差があり、結果開発は遅々として進んでいない。事実これより挑む山道は昭和の晩年まで直に鞍部を跨いでいたし、鉄道は今も昔も西海岸線を走破した試しがない。結果太櫓越山道が唯一の生命線となる訳だが、山道に注がれた先人の血と汗の結晶は、トンネル開通後も極上の峰越フラットダートなる副産物を齎す。その恩恵に授かったドライバー&ライダーは少なくない。走破済という経験則から今度こそR8での峠越えを立証したい。下町ロケットアウディ計画起死回生編、始まります。

 

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◆沢と一体化した太櫓越山道内最大級の湿地帯

終盤に差し掛かった今遅きに失した感は否めぬが、R8での太櫓越完走は限りなく不可能とみて間違いない。下り始めの巨大な亀裂にミゼットの通り抜けも危うい最狭区、それに長靴の着用が必至の泥濘が随所に待ち受け、R8云々の前に四輪の通り抜けなど最早絵空事に等しい。

コーラを一気飲みしてげっぷをせずに山手線の全駅言い切りますに等しい無茶ぶりだ。それでも僕は言い続ける。いつかはアウディと。昭和58年にいつかはクラウンのキャッチコピーで華々しく登場した七代目クラウンのCMは、世のオジ様方の脳裏にはっきりくっきりと焼き付いておられるに違いない。

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◆時折行く手を遮る開閉機能の無い天然の高さ制限バー

時同じくしてここ太櫓越の廃道化への道程が始まった。あれから30余年が経過し七代目クラウンのほぼ全てが市場から消え去って久しい。あの時現役宛らの良質な状態にあった山道は、今南方の島々に比肩する密林状態と化している。人喰い大蛇等の未確認生物といつ対峙しても不思議でない状況下にある。

事実一度に十余人の尊い命を奪った三毛別事件や、一夜にして三人の学生が命を落としたカムイエクワンゲル事件が発生しており、人喰い凶暴熊の巣窟に残されたエンジン掛けっ放しの単車を発見した杉下右京は、これはオウンゴールですねぇ!とでも言うのだろうか。

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◆当山道では希少な見通し悪い区間続くの警戒標識

廃道とアウディR8、通常であれば相見える事のない対極にある両者のクロスオーバーは、常識的に考えてみれば有り得ない話だ。だが事実は小説よりも奇なりというように、時としてそんな馬鹿な!と絶句する衝撃的シーンを目撃しないとも限らない。事実銭函界隈でそれは起こった。

知る人ぞ知る小樽と札幌を結ぶ一時代前の幹線路、通称軍事道路で事件は発生する。ブロローン、ブロローン!静寂を切り裂く異音は余りにも場違いで、通常の音域とは明らかに異なる排気音に森の住人もざわめいた。現場にいた僕もそりゃねーわ!とツッコミを入れたくなるほどの怪音だ。

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◆何故か法面側に車両一台分の空間が確保されている

一般の市街地ではほとんど聞く事のない音色であるが、僕には聞き覚えがありどこか懐かしさも感じられた。バブルの象徴でもあるジュリアナ東京、あの頃のお台場に夜な夜な集う高級車の排気音に酷似している。

Oooh きっと来る〜♪

まさか軍事道路をスーパーカーが駆け抜けるだなんてねぇ、そのまさかが本当に起こった。目の前に現れたのは般ピーがイメージするスーパーカーとは異なる形状の四輪であった。だが排気音が一般車のそれとは明らかに一線を画している。

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◆二度と通る事のない車両を擁護するガードレール

現場ではその正体が分からず仕舞であったが、後にそれがトンデモナイ高級車である事を知り驚愕する。藪漕ぎ必至の完全なる廃道区間ではなかったが、倒木が横たわり縦横無尽に亀裂が走る一般車でも近付かない山道での対峙は、僕が持つ廃道の世界観を打ち砕くに十分なインパクトがあった。

太櫓越の激藪に単車をゴリ押しするシーンも常人からすれば常軌を逸しているのかも知れないが、失われた道を走行するアウディR8は僕のそれを軽く凌駕する。長年培ってきた常識や概念が音を立てて崩れたのは言うまでもない。しかしよくよく考えてみると、非常識の一言で片付けられない側面がある。

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◆三度おいちゃん道と遭遇し路面は刈払われ浅藪と化す

何故なら現場は誰もが通行可能な幹線路として機能していた道であり、元来車道ではない登山道や獣道を四駆で荒らすのとは訳が違う。元々車道であった道筋を車両で踏襲するのであって、自己責任で完結出来れば誰にも迷惑をかけない個人の一趣味に過ぎない。

それに何と言っても太櫓越は路線バスを通した幹線にして元国道であるから、R8が場違いな異物とか非常識とは言い難い側面がある。開削以前の状態に戻りつつある今だから釈然としないのであって、少々手入れすれば大いなる違和感は瞬く間に解消されるだろう。(←そんな事ねーよ!)

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◆日暮れ前に山道で唯一無二のエスケープルートに到達

下ネタロケットアウディ計画は失敗に終わったと認めざるを得ない。だがヘナリワンによる十余年来の完踏は限りなく現実味を帯びている。何故なら当山道唯一無二のエスケープルートを捉えたからだ。

三叉路の進行方向右が現道に通じる取付道で、左が山道の続きで臼別温泉へと通じているはず。日が暮れる前に脱出が叶い安堵する。ここで調査を一旦中断し、明日以降の再開へ向けしばし英気を養う事とする。

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