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教育委員会が贈る歴史の道調査報告書、その傑作を補完して有り余る佳作、歴史の道踏査報告書〜古老の証言集〜 |
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トップ>廃道>北海道>太櫓越峠 |
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太櫓越峠(12) ★★★★★ |
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太櫓越峠(ふとろごしとうげ)の取扱説明書 渡島半島の東側を南北に走る海岸線は、我が国で五番目に重要な路線にして、北海道随一の幹線である事に異論の余地はない。その東海岸線を陽とするならば、瀬棚と江差を結ぶ西海岸線は陰となる。山陽道と山陰道の例を出すまでもなく両者の交通量には決定的な差があり、結果開発は遅々として進んでいない。事実これより挑む山道は昭和の晩年まで直に鞍部を跨いでいたし、鉄道は今も昔も西海岸線を走破した試しがない。結果太櫓越山道が唯一の生命線となる訳だが、山道に注がれた先人の血と汗の結晶は、トンネル開通後も極上の峰越フラットダートなる副産物を齎す。その恩恵に授かったドライバー&ライダーは少なくない。走破済という経験則から今度こそR8での峠越えを立証したい。下町ロケットアウディ計画起死回生編、始まります。 |
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◆翌朝再びおいちゃん道と分かれるT字路に舞い戻る 山道よりおいちゃん道が分離する現場から一目散に逃げ帰った僕は、翌朝何事も無かったかのようにノコノコとT字路へと舞い戻る。一晩眠ると人は冷静な判断が出来るようで、いつ踏み付けたか知れない足跡に怯えるのもいかがなものかと言い聞かせ、躊躇する事無く再突撃と相成った。 怖くないと言えば嘘になる。過去に一度だけ10mの至近距離で羆と対峙した際、金縛りの如し全く身動きが取れなかった。偶発的遭遇は不可避であると覚悟しているとはいえ、いざとなると自身がどのような行動を取るかは蓋を開けてみなけりゃ分からない。とりあえず「かかって来んかい!」と威勢を張る。が・・・ |
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◆前日には確認出来なかったビッグフットを捉える は〜ひふ〜へほ〜! 昨日のよりでっかくなっちゃった! 昨日捉えたものとは明らかに異なる踏み跡は規格外で、しかも下手こくと数時間前のものと思われるくらい新鮮で実に生々しい。至近距離に居れば獣特有の異臭がすると聞くが、それに関しては全くと言っていいほど感じなかった。 |
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◆への字型に圧し折れた生木も奴の仕業に見えてくる ヤツが現場を通り過ぎてから一定の時間が経過しているのかも知れないが、これでハッキリとしてしまった。凶暴熊が当山道を日常的に闊歩している。元々彼等のテリトリーであるから、現役時代もそれ相応の横断等はあったであろうし、現在はこの界隈を庭の如し行き来しているのも分からなくはない。 当山道は間違いなく彼等の移動経路になっている。人々の往来が絶えて久しい現在の山道を、彼等は日常的且つ頻繁に行き来しているのだ。奴等は激藪を泳ぐように移動する。茶屋川のおいちゃんが目撃した彼等の強靭且つ類稀な身体能力は、我々がイメージする羆像を覆すには十分なエピソードだ。 |
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◆暗渠にて跨いだ小川としばし直線的に並走する激藪道 足跡の大きさから推定して現役力士以上の巨漢であるのは確実で、多少手加減してくれたにしても直接対決すれば重傷は免れない。尤もまともに一戦を交えるとなれば容赦はしない。やるかやられるか生きるか死ぬかの有事であるから、事と次第によってはその日が命日となるかも知れない。 自身のやっている事が恐ろしく危険な行為である事を改めて認識するも、どこかで大丈夫という根拠無き自信があるのも事実だ。考えてもみて欲しい、パッと見はルートを見誤り遭難しかけた初心者ライダーに映るが、かれこれ十余年の長きに亘り藪道を追求する流しの廃道ハンターである。 |
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◆徒歩道サイズに刈り払っているが実際は凄まじい藪道 十余年を経た今でもちょっとした違和感で即時撤退するし、危険と判断すれば手を引く事も辞さない。若かりし日は多少無理をしてでも抑えきれない好奇心や欲求を満たす為に、半ば強引にミッションを成立させる事もあったが、近頃は駄目なものは駄目、ならぬものはならぬと諦めが付くようになった。 冒険家にとって撤退ほど屈辱的な場面はない。その先に死が待ち受けていようとも前進を躊躇わないのが常で、引き際を見誤って落命する者は後を絶たない。僕はちょっとした藪にも脅威を感じる稀代の臆病者であるから、手強いと思えば迷わず撤収し次の機会を窺いしばし沈黙を守る。 |
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◆徒歩道サイズの空間を確保しながら少しずつ前進する 好機はいつか必ず訪れる。常に危険と背中合わせの戦場で息の長い活動をする秘訣、それはズバリ逃げる勇気であると僕は考える。基本的に旧廃道は逃げも隠れもしない。来年も再来年もずっとそこに在り続ける。多少の損傷や劣化はあるにしても、道そのものが消えて失くなる事はない。 五体満足で生還すれば必ずいつかはリトライするチャンスがある。だが無理をして失敗すれば取り返しのつかない事態に陥るやも知れぬ。頭ではそれが分かっていても自身の欲求を抑えるのはそう簡単ではない。あと少し、もう一歩、その逸る気持ちが命取りとなり、多くの挑戦者が散っていった。 |
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◆だらんと垂れ下がる錆び錆びのガードレールを捉える 引き際を見誤る甘い蜜は方々に散りばめられている。錆び錆びでだらんと垂れ下がるガードレールも進退のタイミングを惑わす材料の一つで、美味しそうな遺構に誘われついつい長居、或いはその先の未知なる遺構へと心は掻き立てられる。 忍び寄る誘惑の魔の手から逃れるのは至難の業だ。やめられない止まらないという点では覚醒剤に似ている。同じ覚醒するならシャブ漬けじゃなく藪漬けで、オレ様と一緒に列島縦断廃道遍路の旅に出ないか、清原? 太櫓越峠13へ進む 太櫓越峠11へ戻る |