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教育委員会が贈る歴史の道調査報告書、その傑作を補完して有り余る佳作、歴史の道踏査報告書〜古老の証言集〜 |
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トップ>廃道>北海道>太櫓越峠 |
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太櫓越峠(7) ★★★★★ |
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太櫓越峠(ふとろごしとうげ)の取扱説明書 渡島半島の東側を南北に走る海岸線は、我が国で五番目に重要な路線にして、北海道随一の幹線である事に異論の余地はない。その東海岸線を陽とするならば、瀬棚と江差を結ぶ西海岸線は陰となる。山陽道と山陰道の例を出すまでもなく両者の交通量には決定的な差があり、結果開発は遅々として進んでいない。事実これより挑む山道は昭和の晩年まで直に鞍部を跨いでいたし、鉄道は今も昔も西海岸線を走破した試しがない。結果太櫓越山道が唯一の生命線となる訳だが、山道に注がれた先人の血と汗の結晶は、トンネル開通後も極上の峰越フラットダートなる副産物を齎す。その恩恵に授かったドライバー&ライダーは少なくない。走破済という経験則から今度こそR8での峠越えを立証したい。下町ロケットアウディ計画起死回生編、始まります。 |
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◆合成写真と疑われても致し方ないイリュージョンおにぎり 断っておくがこれは合成写真ではない。正真正銘の国道標識がそこにある。支柱が激藪の渦中に埋もれている為、一見すると宙に浮いているように映る目の錯覚だ。僕は冬の北海道を知らない。従ってこれは全くの想像であるが、厳冬期は雪原におにぎりが転がっているシーンというのも無きにしも非ずだ。 過去最も早い上陸が6月であるから、雪解けの頃だと現役時に等しい真っ当な姿が拝めるのかも知れない。それ以外は激藪に包み隠されているのが常であるから、太櫓越頂上のおにぎりは最盛期には藪に呑み込まれている可能性が大で、基本的に宙に浮いているの標準仕様となっている。 |
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◆おにぎりはいつ脱落してもおかしくないほど朽ちている こいつが踏ん張っている限り、この峠道を林道だなんて言わせない。確かに現況のみで言えば当路線は一般林道と何等変わらない。誤解されても致し方ない部分はある。首の皮一枚で繋がっている満身創痍の国道標識に、あと10年は持ち堪えてくれと願うのは酷というものだ。 何せ彼は既に30余年もそこに踏み止まっているのである。反省しろ!と廊下で水の入ったバケツを両手に持たされ直立する生徒が、放置され気が付けば40過ぎのおっさんになっていたに等しい。小学校の廊下に何故か中肉中背のおっさんがバケツを持って立っている、それくらいのインパクトがある。 |
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◆峠は三叉路で現在の本線は頂上で左折する支線林道 同期が次々と卒業して行く中で、彼は沈黙を貫き「そこで反省しとけ!」の先生の一言を頑なに守り続けている。路線切り替えが行われた昭和50年代半ばから早30余年が経過し、今この瞬間もレコードを更新し続けている。そしてそう遠くない時期に半世紀超えも現実となろう。 いや、もう既に設置から50年を超過しているかも知れない。現道に組み込まれた橋梁の銘板は、路線切り替え時期が昭和56、7年であると訴えている。路線切り替えの直前に設置されたとしても既に33年が経過している事になるが、引退を目前に控えた路線への投資というのは現実的ではない。 |
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◆おにぎりと向かい合う支柱が焼け焦げた警戒標識 国道標識の設置はどんなに遅くとも昭和50年代初頭、或いは昭和40年代に遡ると考えるのが自然だ。仮に昭和50年の設置であれば既に40年選手であるが、彼がそれ以上のベテランである可能性は十分有り得る。国道標識が登場したのは東京五輪以前の昭和35年である。 標識の交換頻度は承知していないのであくまでも憶測に過ぎないが、太櫓越のおにぎりが半世紀を超えていないとは言い切れない。万が一昭和35年の設置以来標識が交換されていないとすれば、彼は既に半世紀超の年輪を重ねた大ベテランで、錆びに錆びた現状の劣化具合からも頷ける。 |
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◆現役時代峠の南側はスリップし易かったと訴える標識 わざわざ魔沙斗のローキックを繰り出さなくても、僕のライダーキックで圧し折れるかも知れない朽ちたオブジェであるが、この峠道の標識類を甘く見てはいけない。彼等の粘り腰は半端ではない。頂上ではおにぎりと対峙する形で警戒標識が佇んでいる。その支柱は積年の直射日光ですっかり焼け焦げている。 遮る物がない吹きっ晒しの頂上付近では、風速数十メートルの強風に晒される事も珍しくはないであろうし、台風や爆弾低気圧等の暴風雨に見舞われたのも一度や二度ではないだろう。そこに50度前後の寒暖差が加わる。それも毎年であるから経年劣化は南国の比ではない。 |
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◆峠に密集する標識類が辛うじて元国道の威厳を保つ 自然の猛威は人間が加える一撃よりも遥かに脅威で、彼等はそうした災難を幾つも潜り抜けてきたという実績がある。従って今すぐどうこうという事はないだろう。但しXデーは確実に近付いている。残念ながらそう遠くない将来に太櫓越のイリュージョンおにぎりが過去の風物詩になるのは避けて通れない。 それが旧廃道の定めであり悲しい現実でもある。ただ峠道の天辺で感傷に耽っている暇はない。現場は凶暴熊の巣窟である。車両の通行が日常から非日常になって久しい。事実峠より先は荒れるに任せ四輪一台分の保障さえない藪道と化している。それでも僕は前進を躊躇わないし完踏の自信がある。 |
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◆峠より先の路は雲行きが若干怪しくなるもそれは折込済 絶対に抜け切れる、そう信じて止まないのは過去に踏破経験があるからだ。未踏の路線ではない、この事が僕の自信に拍車を掛けている。かつて勢いだけで攻略した物件を、スキルアップした今の自分が落とすはずがない。 いつものように根拠のない自信ではない。経験値に裏打ちされた確信めいたものだ。旧廃道に絶対は無いが、克服する術を持ち合わせている。いつになく僕は余裕をぶっこいていた。膨らみに膨らんだ期待値が僅か数秒後に粉砕するとも知らずに。 太櫓越峠8へ進む 太櫓越峠6へ戻る |