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教育委員会が贈る歴史の道調査報告書、その傑作を補完して有り余る佳作、歴史の道踏査報告書〜古老の証言集〜 |
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トップ>廃道>北海道>太櫓越峠 |
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太櫓越峠(5) ★★★★★ |
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太櫓越峠(ふとろごしとうげ)の取扱説明書 渡島半島の東側を南北に走る海岸線は、我が国で五番目に重要な路線にして、北海道随一の幹線である事に異論の余地はない。その東海岸線を陽とするならば、瀬棚と江差を結ぶ西海岸線は陰となる。山陽道と山陰道の例を出すまでもなく両者の交通量には決定的な差があり、結果開発は遅々として進んでいない。事実これより挑む山道は昭和の晩年まで直に鞍部を跨いでいたし、鉄道は今も昔も西海岸線を走破した試しがない。結果太櫓越山道が唯一の生命線となる訳だが、山道に注がれた先人の血と汗の結晶は、トンネル開通後も極上の峰越フラットダートなる副産物を齎す。その恩恵に授かったドライバー&ライダーは少なくない。走破済という経験則から今度こそR8での峠越えを立証したい。下町ロケットアウディ計画起死回生編、始まります。 |
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◆完全一車線の山道にしか見えないが実際は5m幅を誇る 今この瞬間対向から木材満載の大型トラックが現れても驚きはしない。数多の林道で経験している何気ない一コマであるから、ひょいと浅藪に避け相手をやり過ごすだけだ。林道愛好家にとってそれは至って自然な行為で、いつ対向から大型車が現れてもいいという心構えでいるから全く動じない。 ただこの状況下でバスと対峙したら狼狽えるのは必至だ。何故ここにバスがと?が三つ並ぶと同時にフリーズするだろう。ちょっと油断すると藪に支配されかねない怪しい路を走るバスを僕は見た試しがない。このような場所でバスと対峙するのは未知との遭遇であるから、真夏でも凍り付くに決まっている。 |
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◆普通車同士であれば平然と擦れ違えた緩い左カーブ だが村人によるとトンネル開通以前は普通にバスが峠を越えていたというから、いつ何時カーブの先からぬぅ〜っと大型バスが現れてもおかしくはない。道路規格としては今日現在も大型車一台の通行を許しているから、山道内に於けるバスとの対峙は100%有り得ないとは言い切れない。 完全一車線となっている現状だと不可思議現象に映るが、一時代前は現在の道幅に加え左右共に1m前後の余白があり、4m超の幅広道をバスが往来するシーンは不自然ではない。その有り余る道幅は普通車同士の擦れ違いは勿論、普通車と大型車の擦れ違いまで許容した可能性は大いに有り得る。 |
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◆小さな掘割の両脇に認められるコンクリート製の側溝 本線は小樽と江差を結ぶ大動脈にして、東海岸が不通になった際の迂回ルートでもあるから、ある程度の水準並びに高規格を有していたとの解釈が妥当だ。事実この山道には他では御目に掛かれない遺構が複数箇所で認められる。道端に埋設されたコンクリ製の側溝もそのひとつだ。 トップバッターのガードロープで期待値は高止まりしているが、その流れを裏切らない道路遺構の出現に興奮を禁じ得ない。土饅頭を粉砕した小さな掘割の両脇には、コンクリート製の大型U字溝が認められる。旧廃道の峠道では手掘りの側溝であるとか、側溝自体が確認出来ないのは珍しい事ではない。 |
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◆暗渠&コンクリ製の側溝が仕込まれる小さな掘割 当山道でもその存在は鼻から期待などしていなかったが、太櫓越はいい意味で期待を裏切ってくれた。流石昭和の晩年まで現役を張っていただけの事はある。遅かれ早かれいつかはトンネルが完成する。だから手掘りでいいじゃん、しばし我慢すればいいじゃんとはならなかった。 この峠道の整備は路線切り替えの直前まで手を抜かなかった。手抜きをしなかったのには訳がある。西海岸線には古来鉄道が通じていない。海路に重きを置いた時代もあったが、戦後は完全に陸路に軸足を置き、この峠道が西海岸唯一の生命線として重責を担ってきたという歴史的背景がある。 |
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◆コンクリ製の側溝は支線林道との交点まで続く 太櫓越がその一部に組み込まれている以上、何があろうとも陸路の灯を絶やす事は出来ない。峠道の封鎖は沿岸の漁村が陸の孤島と化す事を意味する。日本海の冬の時化は半端ではない。波風立たぬ穏やかな日もあるにはあるが、何日も船が出せない由々しき事態も多々ある。 鉄道が無い以上陸路に課せられた使命は大きい。中途半端な設備&保守では生命装置を維持出来ない。そこに近代テクノロジーを惜しみなく投じ、類稀な熱意を以て事に当たっていたとしてもおかしくはない。幸いにして峠は220mと思いの外低く、他の豪雪地帯に比し積雪量は少ないと聞く。 |
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◆峠の直前で枝分かれするゲートに閉ざされた支線林道 道南であっても油断はならないが、常に襟を正した状態であれば通年通行は死守出来たのではないだろうか。峠区のみ完全一車線という路線は珍しくない。そのような中でインチキ二車線レベルを保持する太櫓越は、冬場でも最低一車線は確保するという関係者の意気込みが垣間見える。 峠の直前にはゲートに閉ざされた支線林道が分派している。そちらは法下から路肩まで3m以内の純粋な林道仕様にある。大型車一台の通行がやっとの幅員で、普通車と二輪車の擦れ違いさえままならない狭隘路だ。それと比較すればいかに太櫓越が優れているかは一目瞭然である。 |
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◆ゲートに掲げられたクマ出没の警告文に戦々恐々とする 勢いで踏破した前回は無視した支線林道であるが、何等かの情報が得られるかもと期待して近付くと、忘れかけていた現実を思いっきり突き付けられる。そう、僕は既にデンジャラスゾーンに片足を突っ込んでいるのだ。 どう見ても北野武監督の「その男凶暴につき」からパクったとしか思えない警告文が、胸にグサっと突き刺さる。ただ目が霞んでいる性か今の僕にはこの但し書きが「危険です!!共謀ゲス出没につき出演禁止!」にしか見えない。 太櫓越峠6へ進む 太櫓越峠4へ戻る |