教育委員会が贈る歴史の道調査報告書、その傑作を補完して有り余る佳作、歴史の道踏査報告書〜古老の証言集〜

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美利河峠(16)

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美利河峠(ぴりかとうげ)の取扱説明書

ニセコ・ルスツ・トマム・・・北海道に於ける片仮名の三文字表記地名は?3秒前、2、1、Q!と行き交う者にいきなり投げかけると、必ずと言っていいほど返ってくるのがメジャースキーリゾートと相場は決まっている。そこにピリカの名を挙げる者はまずいない。道民の内外を問わずピリカってどこ?ピリカって何?というのが現実的な反応である。その影の薄さは道路的にも然りで、美利河峠越えを目的として国道を走る者は皆無に等しい。だがそれが単なるドライブやツーリングではなく、旧廃道の探索となると話は別だ。一般に美利河峠に古道筋は存在しないとされ、旧廃道に言及した記事を目にした試しはない。事実拡張に次ぐ拡張で形成された現在の峠付近に、並走する別ルートは実在しない。但しその前後には失われた切り通しを補って余りある長大路線が森の奥深くで息を潜めている。そこで目にしたのは道内各地に点在するメジャー物件に勝るとも劣らない涎もののレアな歴史道であった。完踏が叶わない絶望的な廃道の秘奥に見た超絶レア絶景と、辛うじて単車での踏破が叶う長大藪道の現況を余す事なく白日の下に晒す。

 

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◆廃線にしても旧道にしても違和感のある進入路

果たしてこの砂利道の正体は瀬棚線跡なのか、それとも国道230号線の旧道の可能性を含む道路なのであろうか?舗装路から未舗装路へと切り替わる地点ではまだ何とも言えない。二車線路が90度折れ曲がった直後に派生する妙な線形は、どちらでもないというのが正直な印象だ。

そもそも何故この砂利道に照準を合わせたのかと言えば、単純に後志利別川の左岸を伝う路が見出せないからだ。他に目ぼしい路線でもあれば話は別だが、この界隈にこれといった道路が見付からない。ダム直下を豪快に横切る現国道筋が左岸に居座る区間は極僅かしかない。

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◆背後の二車線路と砂利道との間には5mの落差がある

ダム開発以前の国道は美利河駅前より川底目掛けて滑り落ちていたであろうし、現国道筋も似たり寄ったりの経路で後志利別川を一跨ぎしている。かつての駅前と思われるバス停付近から国道が右岸へ飛び移るまで、たったの500m前後しかない。その間に怪しい道があれば間髪入れずに突っ込んでいる。

現場にそれらしき道が見当たらない事と、美利河温泉が入口と言う茶屋川のおいちゃんの証言は矛盾しない。だとすれば迷わず行けよ、行けば分かるさ!という運びになるが、そうは問屋が卸さない。現場の地形には一貫性が無さ過ぎて手応えがない。それは鉄道跡にしても道路跡にしてもだ。

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◆いつ消滅してもおかしくない路が細々と奥へ延びている

二車線の快走路と未舗装路の間には5m前後の落差がある。過去に鉄道が通じていたならば、線路跡を掘り込んだか後年盛土をしたかのどちらかで、そうでもなければこれほどの比高は生じない。従って鉄道跡地と見做すには?が三つ並んでしまう。では旧道の場合はどうか?

元幹線道路であったならば線形としては有り得ないが、美利河温泉への引き込み線が本線である現状を踏まえれば、L字に折れ曲がった直後を起点にしたのも止むを得ない。T字の交点でL字に曲がるのを本線とする措置に比し、L字そのものが本線である事の方が一般には分かり易い。

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◆のっけからジャングルの様相を呈す密林状態の路

般ピーが間違わない措置を講じたと思えば、その線形は適切であるようにも思える。しかしそんなポジティブな僕の解釈とは裏腹に、砂利敷きの路は容赦なく奈落の底へと突き落とす。一体全体何なんだこの道は?謎の支線はのっけからこの有様で、最早未舗装林道どころの騒ぎではない。

路面には四輪の轍跡が薄らと認められるが、それさえもいつ消えてもおかしくはない状況で、当然ながら全幅の信頼は置けない。この通路を自動車が行き来したのは間違いないが、最後に通ったのがいつなのかが読めないくらい判然としない。しかも両サイドの草木が今にも襲いかからんとする勢いで迫り来る。

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◆イタドリの群生が覆い被さり緑のトンネルと化している

残念ながら植物の猛威は止まる事を知らない。今や猛威は脅威と化している。枯葉のトンネルや〜!などと流暢な事を言っている場合ではない。先が読めないのだよ、先が。何となく空間は続いている。しかし視界は25m前後しかなく、いつ何時途切れてもおかしくない危うい路を前に戦々恐々としている。

単なる藪道でない事が不気味さを助長し、いつ引き返そうかなどと既に撤退を考えている自分がいる。茶屋川のおいちゃんがウインチを駆使して踏破した悪路のイメージとは思いっきり被っている。従って現況からその可能性は大いに有り得る。しかしこれが花石まで続くとなるといくら何でも怖過ぎる。

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◆草原のような開けた場所に辛うじて道跡が認められる

頭上に覆い被さるイタドリの群生は鳴りを潜め、360度視界は開けた事で安堵する。しかし現場は見渡す限り緑の楽園で、今にも消え失せそうなダブルトラックが辛うじて藪の大海を割っているに過ぎない。振り向けば道路らしからぬ直線路で、もしやこれは瀬棚線跡なんジャマイカ?と呟く弱気な自分がいる。

これが鉄路跡なら範疇外であるから、さっさと撤退しなければならないし、こんなんに付き合っている暇などない。そうやって撤収する言い訳を探している自分がいる。確かに視界前方に目を凝らしても全くブレない直線が続いている。線形のみで言えば瀬棚線跡の可能性も無きにも非ずだ。

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◆瀬棚線跡か道路跡かが判然としない直線の藪道

現にこのラインは美利河駅跡地の延長線上に位置する。但し足元には鉄路特有のごつい砕き石は見当たらない。雑草の根元に見え隠れするのは道路用の細かいバラスで、元鉄路だとしても道路転用からかなりの歳月を経ているのは間違いない。

この時点で僕は鉄道筋がどこをどう伝っているのか把握していない。従って精査する指標を持ち合わせていない。この期に及んで鉄路か道路か判別出来ない愚かな自分がいる。ただ確かなのはこの道筋が後志利別川の左岸を伝っているという事だ。

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