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教育委員会が贈る歴史の道調査報告書、その傑作を補完して有り余る佳作、歴史の道踏査報告書〜古老の証言集〜 |
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トップ>廃道>北海道>美利河峠 |
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美利河峠(9) ★★★★★ |
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美利河峠(ぴりかとうげ)の取扱説明書 ニセコ・ルスツ・トマム・・・北海道に於ける片仮名の三文字表記地名は?3秒前、2、1、Q!と行き交う者にいきなり投げかけると、必ずと言っていいほど返ってくるのがメジャースキーリゾートと相場は決まっている。そこにピリカの名を挙げる者はまずいない。道民の内外を問わずピリカってどこ?ピリカって何?というのが現実的な反応である。その影の薄さは道路的にも然りで、美利河峠越えを目的として国道を走る者は皆無に等しい。だがそれが単なるドライブやツーリングではなく、旧廃道の探索となると話は別だ。一般に美利河峠に古道筋は存在しないとされ、旧廃道に言及した記事を目にした試しはない。事実拡張に次ぐ拡張で形成された現在の峠付近に、並走する別ルートは実在しない。但しその前後には失われた切り通しを補って余りある長大路線が森の奥深くで息を潜めている。そこで目にしたのは道内各地に点在するメジャー物件に勝るとも劣らない涎もののレアな歴史道であった。完踏が叶わない絶望的な廃道の秘奥に見た超絶レア絶景と、辛うじて単車での踏破が叶う長大藪道の現況を余す事なく白日の下に晒す。 |
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◆巨大な丸太を支えていた土台はコンクリートの塊 正確なL字を描く物体は根曲竹に占拠され、まるで古代遺跡の様相を呈す。何千年も前の失われた文明の置き土産に見えなくもないが、川を挟んで左右で対峙するこの巨大建造物は、僅か数十年前まで現役で供用されていた近代遺構である事実に驚きを隠せない。 こいつが巨大な岩石を加工したものであれば、数百年前の年代物という見方も出来るが、残念ながらこの物体はコンクリートで出来ている。石垣であれば100年超は遡れるが、道路構造物と仮定した場合特殊なケースを除けば戦後の代物である可能性が大である。 |
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◆対岸に認められる数本の丸太は崩れた橋台の残骸 ピリカ峠にどれほどの需要があったのか現時点で定かでないが、これが戦前の構造物だとしたら大したものだ。川の両岸に氾濫しても微動だにしない堅牢な土台を設けたという事は、その昔から重要な路線であった事を示唆する。今日現在美利河峠が国道指定されている事実がそれを裏付けている。 清流を挟んで向かい合う強固な土台は、橋梁跡と断定して良かろう。対岸には直径が50cm前後に及ぶ3〜4本の巨木が、川底へ向け一斉に倒れている。そいつが橋桁の流出により崩れ落ちた橋台であるのはほぼ間違いない。現場にはその他にも橋梁絡みと思われる丸太が散在している。 |
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◆現場到着直後に対岸より撮影した落橋地点 朽ち方が半端無くここ数年の出来事ではないと思われるが、もう少し到着が早ければ首の皮一枚程度なら繋がっていたかも知れないと思うと残念でならない。ただ腐った木が一本だけ凌いでいたとしても単車での渡川は不可能で、綺麗さっぱり流失している方が諦めもつくというものだ。 このショットは落橋現場に到着し間髪入れずに対岸へ渡った直後に撮影したものであるが、仮に激藪を勢いよく突っ込んでいたならば、樹海の中で迎える唐突な地割れにヘナリワンごと吸い込まれていたであろう。現場が橋梁ありきの地形に改変されている証拠でもある。 |
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◆刈り払い後に再び対岸より撮影した落橋地点 徹底して藪を刈り払い垂直壁を露出させてみて、初めてそこが土台の末端である事を意識するのであって、足元が激藪に包み隠されている時点では、それほどの恐怖は感じない。しかし全てが赤裸々となった今となっては、撮影の為にヘナリワンを崖っぷちギリギリまで寄せるのも至難の業だ。 川面との落差は10mに満たないが、もしもこんな所で足を踏み外したら大変だ。現場は二度と這い上がれない深淵にある。大抵は土台の左右に直に川を渡る前時代の路跡が認められるものだが、ここにはそれらしき旧道筋が見当たらない。有史来橋を架け続けてきたのだろうか? |
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◆まるで絵画の如し惚れ惚れとする橋梁跡の廃道美 それとも別の古道筋が存在するのだろうか?今やコンクリ塊は自然の中にすっかり溶け込み、森の一部と化している。木漏れ日が照らし出す現場一帯は、まるで宮崎アニメの世界に紛れ込んだかのようで、何等かの理由で人類が滅亡した跡の世界を垣間見ているような錯覚を覚える。 釣り人にとっては何でもない一コマであろうが、我々にとっては涎物の光景だ。森の中に忽然と現れる巨大人工物は実にセンセーショナルだ。しかし当界隈の歴史を丹念に調べ上げその背景を突き詰めれば、いつかはこの遺構の必然性に気付く。遅かれ早かれこの橋梁跡の蓋然性を強く意識する事になるのだ。 |
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◆対岸に続く道跡はどこをどう撮っても同じように映る 対岸の高台には道跡と思わしき痕跡が延々と続いているが、残念ながら単車での通り抜けは叶わない。頭上の空間がパックリと割れているが、現場は高さ3mに及ぶイタドリと根曲竹の群生に阻まれている。自身の目線では1m先の様子が判然としない著しい視界不良の激藪だ。 例えそこに人一人分の幅を刈り進んだとしても、単車を持ち込めない以上そこに何の意味があるのかと冷静に考えた時、止〜めた!との判断に至った事は今でも間違っていなかったと確信している。ピリカ峠に特別な思い入れでもあれば話は別だが、何枚撮っても同じような画像にしか見えない。 |
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◆1m先の様子が判然としない対岸の濃密な激藪 その現実を考慮すると、この激藪に身を投じるのは実に馬鹿馬鹿しい。それに僕には秘策があった。反対側から進入すれば対岸ギリギリまで来れるんじゃね?やはり廃道は単車を通してナンボである。 画的にもそうだし元車道と証明する手立てとしてもそうだ。いつ何時ヒグマと遭遇しかねぬ樹海の中で、彼等との接触を可能な限り避けるという意味でも、廃道&単車の組み合わせに勝るものはない。 美利河峠10へ進む 美利河峠8へ戻る |