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教育委員会が贈る歴史の道調査報告書、その傑作を補完して有り余る佳作、歴史の道踏査報告書〜古老の証言集〜 |
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トップ>旧道>岡山>志戸坂峠 |
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志戸坂峠(16) ★★★★★ |
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志戸坂峠(しとさかとうげ)の取扱説明書 トンネル有るとこ旧道アリ、この格言に従って物見遊山していると、旧トンネルもしくは廃トンネルに遭遇し、芋蔓式に鞍跨ぎの古車道を見出しと一粒で二度美味しい優良物件に遭遇する事は珍しくはない。ここ志戸坂峠は現トンネルに旧廃隧道に尾根越え路の親子三代に亘る路の遍歴が垣間見え、老若男女が歴史道を容易に体現可能な峠道は近代土木遺産の優等生である。現場には必要にして十分な案内板等が備わり、自身の四肢と五感を駆使した実体験と、日替わりで時のアイドルと寝る妄想に裏打ちされた超絶想像力によって、誰もが一定の満足感を得られるに違いない。そこに史料が加わればもうお腹一杯で、次行ってみよう!となる。しかし何かが足りない。消化不良の嫌な余韻がいつまでも尾を引くのだ。この後味の悪さを解消するには土壌に一歩踏み込んだ掘り下げが不可避で、土地の人間に成り切る勢いで峠道を再考する必要がある。再三に亘る現地訪問及び全方位的に現場を精査し、公に出る事のない志戸坂峠の核心に迫る。 |
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◆遊歩道と旧旧道の交点に設置された第一案内板 廃道然とする潤沢な幅広道 志戸坂峠を目指す者の行動パターンは二通りある。一つは案内板の指示に従い100m足らずで行き着く直近の展望台を目指し、軽くウォーミングアップしてから本題に挑むパターン。もう一つは展望台を無視してダイレクトに峠へ向かうパターンだ。 帰り途中に展望台の存在に気付く逆パターンも無きにしも非ずだが、駐車場から公園内の石畳を駆け上がると視界に飛び込んで来る木製の立て札が、これより峠に挑む者に対しターゲットに展望台というオプションを加えるか否かの選択を迫る。 |
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◆初代隧道工事中はヘアピンカーブとなっていた三叉路 通常は展望台に寄るか否か、もしくは峠まで1050mの文字に慄き展望台のみとなろうが、好奇心旺盛な者は案内板には記載されない別の物に興味を示す。それが目指す頂きとは逆方向に整然と続く4m幅の路で、まるで下界へ通じているかのような山道の続きは、あなたの知らない世界へと誘う。 まだ廃道のはの字も知らない純朴な迷える子羊は、車道幅を維持するふかふかの茶色の絨毯に魅了され、その先に待っている何かを期待し奥へ奥へと突き進む。そしてある地点で有耶無耶となり消失する幅広道の存在が日増しに大きくなり、気になって気になって仕方がなく夜も眠れなくなる。 |
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◆代替路がぶつかる三叉路には第二案内板が立つ あの消え方は確実に般ピーをこの世界へ誘う動機となる。僕が万世大路で経験した藪漕ぎの先に見た洞窟の衝撃に等しい。まるで今日現在も整備されているかの如し山道が、忽然と消え失せるシーンは何ともミステリアスで、その背景はどうなっているのかと興味を示す者が一定の割合でいるはずだ。 この世界への第一歩としては入門編に等しい理想的なコースで、大石峠のような二度と気質に戻れないディープインパクトの対極にある。SMプレイにソフトとハードがあるように、旧廃道にも気軽に踏破出来るコースとそうでないものとがあるが、志戸坂峠は良好な整備状況から超の付くお気楽コースと言える。 |
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◆隧道開通日まで全車両が反転していたヘアピンの三叉路 そこをテクテクと歩いて行くと100mもせずに二つ目の立て札が視界に飛び込んでくる。見ると駐車場まで100mとある。そして峠までは50m減の1000mとなっている。この立て札は山道に取り付く公園内の石畳が50mで、山道そのものは50m移動したのだと訴えている。 二つの立て札の間はほとんど高低差を感じない横這いの路であるが、二本目の立て札を機に山道は緩やか登り坂になっている。一般の訪問者は案内板に従い迷わず上を目指すが、道を鑑定する者は二つ目の案内板が立つ地点を無視出来ない。何故ならそこは三方向の幅広道がぶつかる三差路だからだ。 |
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◆二度のヘアピンで高度を一気に稼いでいた代替路 見様によっては三差路の交点はヘアピンカーブの様にも映る。現場はヘアピンの突端に50mの遊歩道がぶつかる、そんなイメージだ。事実砂利道の線形は150度前後で反転し旧道にぶつかる。旧道と旧旧道を連絡する車道が他に見当たらないから、関係車両が乗り入れる為の連絡路なのだろう。 たったの100m前後ではあるけれど、公園内の通路が歩行者専用の遊歩道である以上、日頃のメンテナンスや災害復旧に当る作業車や重機等は、皆このエスケープルートを伝って行き来しているに違いない。その入口は強固な施錠によって固く閉ざされている。従って車両による本線への進入は叶わない。 |
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◆第一案内板以降初の本線上にあるヘアピンカーブ 二本目の案内板にぶち当たる連絡路が常時オープンであれば、四駆でなくとも一般車両は苦もなく山道を行き来出来る。実際に山道の勾配は緩く幅員はそれなりに潤沢だ。それが叶わないから僕は公園脇の小径を伝う羽目になったが、ゲートの脇が甘ければ間違いなくエスケープルートを伝っている。 専用車両の通行のみが許される後付けの作業路であるから仕方あるまい。初動時の僕はそこで思考が停止してしまったが、今は違う。限られた者のみが通行を許されるエスケープルートは、単なる連絡通路ではない。あれは一時期峠を越える一般の車両が行き来した幹線の代替路でなんである。 |
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◆短いピッチの連続ヘアピンで一気に高度を稼ぐ旧旧道 大師堂付近をごっそりと削り取られ行き場を失った旧道筋は、後付けの迂回路によって当座を凌いだ。峠道と直接繋がる唯一にして無二の路、そう、あのエスケープルートは今から80余年も前に設けられた失われた幹線を補完する代替路なのだ。 たった100m前後の固く閉ざされた未舗装路は、後年敷設された作業路でも何でもなく、昭和初期の隧道工事が急ピッチで行われる完工前夜の旧道と新道を結ぶ生活道路にして唯一無二の生命線であったのだ。 志戸坂峠17へ進む 志戸坂峠15へ戻る |