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教育委員会が贈る歴史の道調査報告書、その傑作を補完して有り余る佳作、歴史の道踏査報告書〜古老の証言集〜 |
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物見峠(12) ★★★ |
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物見峠(ものみとうげ)の取扱説明書 美作の県北域に県界を跨ぐ第五の車道を捉えるまでは、四天王の一角を成しそれなりの重責を担った峠道がある。現在は市町村道に区分される車両の通行を許す里道の峠が皆無という特殊なエリアで、日中の交通量がほとんど無いに等しいにも拘らず、主要一桁県道というポストに君臨し続ける路線、それが物見峠だ。我々はこの峠について何も知らないし、さして興味を抱く事もなかった。旧廃道でなければ道路に非ず、その拘りが当該物件を遠避けてきた。しかしこの峠を軽く扱えるのも今日までだ。この峠道無くして今日の黒尾峠は成立し得なかったし、物見峠を無視してこの界隈の交通事情は語れない。黒尾峠から始まる峠物語は右手峠と草の原峠を経ていよいよ最終章を迎える。道路の現況に囚われない歴史道の真髄を御覧頂こう。 |
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◆鳥取県側では珍しい見通しの利く直線は緩い登り坂 県道6号線と県道295号線が交わる交点付近に人家は一軒も無く、かつて家屋が存在した形跡すら認められない。道路以外の目に映る物の全てが傾斜地で、現場には全く取り付く島がないのだ。作業小屋すら設置出来ない居住不適地に県道が通じる理由は幾つか挙げられる。 山深い山中を右往左往する山道への短絡的なアプローチであり、山道に不具合が生じた際の迂回ルートの確保であり、鉄道の保守点検を合理的に履行する為の作業路等であるが、県道6号線が物見峠からダイレクトに智頭に至る点を踏まえれば、“本来の”峠下に当る宇塚との連絡線は至極妥当な経路だ。 |
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◆二度目のピークへ向け結構な登り坂が続く 峠道は川沿いを遡上するのがセオリーで、大概の路はその慣習に従って敷設されている。白坪川と梶並川を結ぶ右手峠然り、真鹿野川と津谷川を結ぶ草の原峠然り、土師川と馬桑川を結ぶ黒尾峠然り。この界隈でその常識に唯一当て嵌まらないのが物見峠なんである。 川の源流点同士を結び付けるのが王道だとすれば、物見峠は物見川と土師川を結ぶのが本来の道筋であり、JR因美線はその慣例に従って敷設されている。そこから察するに物見隧道の直上付近が本来の物見峠で、物見と宇塚を結ぶ経路が真っ当な峠道なのではないか。 |
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◆重厚な石垣の法面が二度目頂上を迎えた合図 この考察を裏付けるかの如し峠から一旦は下り掛った県道6号線は、県道295号線との交点より反発し登りに転じるのである。この低反発マットも驚きの展開に動揺を隠せない。市販の地図からその状況は把握し辛いが、緻密な等高線に彩られた地形図からは読み取る事が出来る。 尤も実際にアップダウンを繰り返す山道を実走して体感するのが最良の方法で、事実山中の何も無い県道同士の交点よりグイグイと登り詰める県道の線形には違和感を禁じ得ない。回生ブレーキで失ったエネルギーを回収する場面での大どんでん返しは、EVにとってはかなりショッキングな出来事だ。 |
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◆パッと見は峠の形を成している二度目のピーク 峠からは下り一辺倒という思い込みによる大誤算は物見残留孤児に成りかねない失態で、ガソリン車でもガス欠寸前であれば脱出不能に陥るケースも有り得る。それもこれも川の源流点同士を結ばないイレギュラーな線形にある。と今更自身の置かれた状況を呪ってもドンマイ!としか言い様がない。 そのような危機的状況で受け皿となってくれるのが県道295号線で、例え智頭に辿り着く事は不可能であっても重力を利して那岐駅付近までは滑り降りる事が叶う。国道付近まで出られればJAFへの要請も容易となる。そういう点でもエスケープルートの存在価値はある。 |
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◆二車線規格の幅広道に支線がぶつかるT字路 用意周到な準備をしていれば大概は意識しないであろう下り途中の登り坂は、そう長くは続かない。500mに満たない短距離で悲鳴を上げる車両など滅多にないだろう。しかし実際に“押し”となるとそれは1kmとも10kmとも思える長丁場に感じられるに違いない。 その行き着く先には広大な更地が待ち構えている。豪快に削られた山塊は片流れの切り通しで完全なる掘割にはなっていない。それでも二度目のピークとはっきりと認識出来るのは、路の前後が明らかな下り坂となっている為だ。そこは第二の峠と言っても差支えない。 |
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◆林道西宇塚観音寺線の起終点を知らせる標柱が佇む 片流れの壁面を擁護するコンクリ製の法面は割と近代的な擁壁で、平成の改修で出来上がったものであろう。恐らくその際に路の拡張も同時に行われ、楽に大型車三台の並列を許す幅広のサミットは物見峠以上に峠らしく、智頭からやってきた者は十中八九そこが峠と勘違いするに違いない。 加茂方面から来た者にとっては単に二度目のピークであるが、逆の場合はここを物見峠と思い込み、誤ってエアコーヒーで一服してしまうかも知れないし、安堵してエアラーメンをすすってしまうかも知れない。また今時の若者ならエアジハードで見えない相手と闘ってしまうかも知れない。 |
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◆T字路を境に再び智頭側へ下りに転じる県道6号線 峠は良くも悪くも少なからず人に心理的影響を及ぼす。真の峠であれば目の前の現実とそれに対する反応にギャップはないが、それが偽峠であれば騙された感によって物見峠のファーストインプレッションは大きく変わってくる。 それが顕著なのは智頭側から挑む初参戦のチャリ組だ。長く辛い登りの終点で大の字になって休息した後に出現する急坂は、事前情報が入手し難かった十数年前までは、聞いてないよ〜!の断末魔が山中に木霊したであろう事は想像に難くない。 物見峠13へ進む 物見峠11へ戻る |