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教育委員会が贈る歴史の道調査報告書、その傑作を補完して有り余る佳作、歴史の道踏査報告書〜古老の証言集〜 |
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トップ>県道>岡山>物見峠 |
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物見峠(8) ★★★ |
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物見峠(ものみとうげ)の取扱説明書 美作の県北域に県界を跨ぐ第五の車道を捉えるまでは、四天王の一角を成しそれなりの重責を担った峠道がある。現在は市町村道に区分される車両の通行を許す里道の峠が皆無という特殊なエリアで、日中の交通量がほとんど無いに等しいにも拘らず、主要一桁県道というポストに君臨し続ける路線、それが物見峠だ。我々はこの峠について何も知らないし、さして興味を抱く事もなかった。旧廃道でなければ道路に非ず、その拘りが当該物件を遠避けてきた。しかしこの峠を軽く扱えるのも今日までだ。この峠道無くして今日の黒尾峠は成立し得なかったし、物見峠を無視してこの界隈の交通事情は語れない。黒尾峠から始まる峠物語は右手峠と草の原峠を経ていよいよ最終章を迎える。道路の現況に囚われない歴史道の真髄を御覧頂こう。 |
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◆岡山県側の最終人家となる茅葺屋根の古民家 物見集落へやって来る路線バスが無い。それは至極当然とも言える事象だ。何故ならこの界隈にはその昔から鉄道が通じているからだ。智頭急行線が開業した近年でこそ選択肢は増えたが、平成9年まで陰陽を結ぶ鉄道は因美線唯ひとつであったから、他の地域からしてみれば物見集落は恵まれている。 5km弱並行移動すれば停車場に有り付けるというのは、鉄道空白エリアが大半を占める県界付近に於いて、恵まれた環境にないと主張するにはかなりの無理がある。昭和中期までの世代にとって5kmの徒歩移動など朝飯前で、庶民にとってマイカーが高嶺の花である以上それは当然の行為であった。 |
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◆物見集落を離れても峠に向けて現役の田畑が続く 阿波温泉行きのバスはあるが、物見峠を越えるバスは無い。わしは昭和25年からここで住んでおるが、バスが峠を越えたというのは見た事も無ければ聞いた事もない。それよりもずっと前から汽車があるからのぅ。 物見集落外れで出会ったおいちゃんの回答はいちいち尤もである。その昔から鉄道が通じている区間に競合路線などあろうはずがない。それが集落を点々と結ぶ平地なら兎も角、人家が皆無に等しい県境の難所をえっちらこっちら上り下りするバス便が存在する方が不自然だ。 |
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◆県道は巨大なS字ヘアピンで高度を一気に稼ぐ 百歩譲ってこの先の沿道に人家がポツリポツリと存在するとか峠に茶屋があったとしても、苦戦必至な鉄道競合路線を開設する理由には成り得ない。従って物見峠を越える路線バスは存在せずと言い切るおいちゃん談は説得力がある。但しその証言を100%鵜呑みにはできない。 何故なら県道6号線と因美線は常に並走している訳ではないからだ。物見隧道を潜り抜けた鉄路は、鳥取県側で県道295号線とタッグを組み、那岐駅へと滑り込む。そこには黒尾峠を越えてきた国道53号線が待ち構え、終盤は国道と並走する形で智頭及びその先の鳥取市内へと至る。 |
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◆急カーブとヘアピンを繰り返す見通しの利かない山道 鉄道は県境で並走する相方の鞍替えをしている。宇塚経由の鉄路に対し県道6号線は宇波を経由している。鉄道が通じない口宇波や口波多を経由する路線バスの可能性は限りなく低いとはいえゼロではない。物見峠を越える路線バスの存在を現時点で完全に否定する事は出来ない。 たった一人の証言で白黒付ける事の危険性を身を以て知っているので、物見のおいちゃん談はあくまでも証言のひとつでしかなく、現場検証及び更なる証言を交えた上で精査する必要がある。フラットな状態でこの県道を眺めてみると、可もなく不可もなくといった状況だ。 |
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◆何だかんだ言って物見峠の岡山県側の道幅は広い 物見集落以降県道はセンターラインを失っているが、それでも相変わらず二車線幅は維持しており、連続するヘアピンカーブでさえ大型車同士の擦れ違いを許す規格にある。これがいつ頃拡張されたのかは定かでないが、落ち着いた路面は昨日今日の拡幅でない事だけは確かだ。 現況だけで言えば路線バスが往来していたとしても何等不思議でない。同じ稜線を跨ぐ県道7号線に比すればこちらの方が余程マシで、ヘアピンの連続で高度を増す仕様はドライバーにとってなかなか厳しいものがあるが、潤沢な幅員はそのマイナスポイントを補って余りある。 |
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◆大型車同士の擦れ違いを許す潤沢なヘアピンカーブ 完全な二車線規格ではないが峠道は概ねそれに準じている。少なくとも岡山県側の狭隘区はほとんど解消されている。この状態が続けば国道53号線に何か不都合が生じた際の代替路に成り得るような気もするが、そうは問屋が卸さない。この状況はそれほど長くは続かないのだ。 鉄道と離れた県道は2km超に渡り緩やかな山肌を直線的に駆け上がる。そして最初のヘアピンカーブを皮切りに見通しの利かないカーブの連続となるが、その難コースは1kmにも満たないうちに頂点に達する。そう、鳥取県との行政界を迎えるのだ。そこに人の温もりは全く感じられない。 |
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◆坂道を上り詰めたカーブの先に待つ4m幅の切り通し 見てくれ、この単なる切り通しの稜線を。前後に取り付く島はなく、茶屋を想像させる更地跡は全く見当たらない。壁面は60〜70度の鋭角でスパッと切れ込んでいて、4m幅の舗装路が前後するだけの掘割となっている。 ここに停留所があるというのは常識的には考え辛く、また物見集落以降唯の一軒も人家が見当たらない事から、公共交通機関の可能性は限りなくゼロに近いのではないか、というのが偽らざる僕の第一印象である。 物見峠9へ進む 物見峠7へ戻る |