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教育委員会が贈る歴史の道調査報告書、その傑作を補完して有り余る佳作、歴史の道踏査報告書〜古老の証言集〜 |
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トップ>県道>岡山>右手峠 |
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右手峠(24) ★★★ |
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右手峠(うてとうげ)の取扱説明書 美作北部の県境に一際存在感の薄い峠がある。県道智頭勝田線と呼ばれる主要路で、曲りなりにも県界を跨ぎ一桁県道という肩書を持っている。しかし左右を志戸坂・黒尾越えの両雄に挟まれている為か、大方のドライバーの眼中には無いに等しい峠道で、実際に平日の通行量は主要県道とは思えぬほど閑散としている。断っておくが当物件は旧廃道に乏しい期待薄の峠道である。右手峠はその期待値に違わぬつまらなさで見事に応えてくれる訳だが、どうしても当路線を取り上げない訳にはいかない必要に迫られた。その理由は他でもない黒尾峠の存在感を際立たせる為だ。脇役あっての主役だとすれば右手峠は名脇役として外せない存在で、肉じゃがのじゃがいもに相当する必要不可欠な具材で、それ無くして肉じゃがは成立し得ない。新旧道の比較も大事だが並走路線との対比もまた重要で、両者の相乗効果は計り知れないものがあるし、峠道に対する見方が大きく様変わりするかも知れない。本件はセンセーショナルな旧廃区に頼らないレポートが成立するか否かの挑戦であり、またマイナー道路が主役に成り得るか否かの試金石でもある。黒尾峠のスピンオフとして右手峠を成立させるべく、県道の今昔を余す事なくここに封じ込める。 |
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◆峠道の新旧道交点より県道筋は盛土仕様になっている 現県道筋に抜け出た山道との交点は逆トの字型をしている。ナチュラルに二手に分かれるのではなく、ハンドルを思いっきり切らねば曲がれない仕様となっているのだ。かつてはこの交点で大型車が右左折していたのだろう。今そこは10人が10人頼まれても御断りするほどの怪しい路と化している。 かつては大型車も通った道なんだけどね。そう言っても恐らく誰も信じない。それくらい進入口は狭まり、未舗装路が怪しさを二割増しにしている。パッと見は沿道に数多ある枝道のひとつに過ぎず、どこからどう見ても特別な存在には見えない。恐らく玄人が見ても第一印象は素人と大差ないと思われる。 |
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◆盛土の先で派生する謎の支線を進行方向右手に捉える 事実山道の大凡の様子を掴んだ僕でさえも、智頭側の進入口は行き止まりの支線にしか見えない。全体像を把握している者がそれであるから、古地図と現代図を重ね大凡の位置を予め特定し、ある程度目星を付けての踏査でない限り、峠へ抜け出るまでは無駄足を踏んでいる可能性を引き摺る事になる。 僕の場合は峠から派生する古道筋らしき道に挑んだ為、比較的踏査は楽であったが、道中に幾つもある支線のひとつにしか見えない智頭側からの挑戦は、なかなか骨の折れる仕事である。特に入ってすぐに迎える落橋現場と、その先に続く幅広の未舗装路は一般林道にしか見えないから質が悪い。 |
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◆急勾配の簡易舗装路の先にはアスファルトの路が待つ 街道ウォーカー等に対する道案内でもあれば話は別だが、当山道は全くの未整備につき上級者向けの難コースと言える。但し道中に悩ましい分岐点や危険箇所は皆無で、峠から進入すればひたすら下界を目指すのみ、下界からはひたすら峠を目指すのみと至って単純な道程となっている。 どちらから進入しても街道筋と確定出来る物証が見当たらないのが難点で、コースそのものは単車の通り抜けを許す超の付く初心者コースで、古道筋の正確な経路さえ事前に把握していれば、道中で発狂するとか取り乱す事もないだろう。趣味の街道歩きであれば入口さえ間違わなければ目的は達成出来る。 |
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◆サイドから見ると舗装路は唐突に途切れている 峠からだと再び県道に抜け出ればそれでおしマイケルとなる。しかし街道筋が旧態依然とした江戸道のまま役目を終えたのか否かについての査定をするには、もう少し様子を見る必要がある。僕は県道に抜け出た瞬間、調査は終わったものと思っていた。それが勘違いと気付いたのが古地図との照合時だ。 現役時代の地図と現代の地図を重ね合わせると、街道は智頭側の着地点で路が二手に分かれるのではなく、新旧道はクロスする形で一瞬しか交わらないX状の交点となっている可能性が高まった。しかし交点付近に旧道の続きは見当たらない。現場には密度の濃い植林杉の壁が立ちはだかるのみである。 |
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◆唐突に途切れる舗装路が旧道の続きと盛土道は語る 勿論そこに分け入って可能な限り街道の痕跡を追い求めたが、残念ながらそれらしき道跡は見付からなかった。照合が間違っているのだろうか?自身の仕事ぶりを疑ったが、思わぬ所から吉報がもたらされた。交点から200m前後下った地点の足元に、寸断された行き止まりの路を捉えたのである。 舗装路は唐突に終点を迎え杉林に行く手を遮られる形で完全に途切れている。県道を目前にして結合していない不自然さと、後年設けられたと思われる取付道、それに何と言っても白線で導かれておきながら、スパッと切断されたかのような終点の切れ目が、大幅な地形改変を想像させる。 |
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◆峠道の一部がアスファルトに覆われる梶並街道 見上げれば県道との高低差は5m前後に及び、一見すると両者はその昔から繋がっていなかったのではないかとの見方も出来る。しかし新旧道の交点から200m前後が盛土になっており、昭和もしくは平成に大改修を受けたのは間違いない。察するに二つの路が繋がっていた可能性は大いに有り得るのだ。 改修されて久しい今となっては想像するより他ないが、新旧道は一時的にピタリと重なり合い一つになった後、程なくして二手に分かれる線形をしていたのではないか。近接する二つの分岐点が1/5万スケールのざっくりとした地図では、X状に交わっているように見えたのではないか。 |
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◆県道の大幅な線形改良で前後が分断された旧街道 そう考えれば県道より一回り狭い舗装路は、旧道の続きという見方が出来るし、何と言っても旧道らしき道筋はこれ以外に存在しないのだ。その矛先は進行方向に待つ集落を確実に射程圏に捉えている。 間違いない、こいつは梶並街道と呼ばれる古道筋である。その路は一度も徒歩道サイズに縮小する事なく舗装路となり、最後の最後まで車道状態をキープしたまま新田地区に滑り込まんとしている。確定だ、こいつは単なる旧街道じゃない。 右手峠25へ進む 右手峠23へ戻る |