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教育委員会が贈る歴史の道調査報告書、その傑作を補完して有り余る佳作、歴史の道踏査報告書〜古老の証言集〜 |
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トップ>県道>岡山>右手峠 |
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右手峠(3) ★★★ |
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右手峠(うてとうげ)の取扱説明書 美作北部の県境に一際存在感の薄い峠がある。県道智頭勝田線と呼ばれる主要路で、曲りなりにも県界を跨ぎ一桁県道という肩書を持っている。しかし左右を志戸坂・黒尾越えの両雄に挟まれている為か、大方のドライバーの眼中には無いに等しい峠道で、実際に平日の通行量は主要県道とは思えぬほど閑散としている。断っておくが当物件は旧廃道に乏しい期待薄の峠道である。右手峠はその期待値に違わぬつまらなさで見事に応えてくれる訳だが、どうしても当路線を取り上げない訳にはいかない必要に迫られた。その理由は他でもない黒尾峠の存在感を際立たせる為だ。脇役あっての主役だとすれば右手峠は名脇役として外せない存在で、肉じゃがのじゃがいもに相当する必要不可欠な具材で、それ無くして肉じゃがは成立し得ない。新旧道の比較も大事だが並走路線との対比もまた重要で、両者の相乗効果は計り知れないものがあるし、峠道に対する見方が大きく様変わりするかも知れない。本件はセンセーショナルな旧廃区に頼らないレポートが成立するか否かの挑戦であり、またマイナー道路が主役に成り得るか否かの試金石でもある。黒尾峠のスピンオフとして右手峠を成立させるべく、県道の今昔を余す事なくここに封じ込める。 |
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◆県道356号行方勝田線と交わる信号機の無いT字路 県道51号線との交点よりしばらくは二車線の快走路が続く。従来の路を上書きしてしまっているせいか、沿道には旧道らしき道筋が全く見当たらない。起点で捉えた予想外の宿場で期待が大きく膨らんだものの、この何とも言えぬ物足りなさが県道7号線の本来あるべき姿である。 勝田市街地を抜けて最初に迎える大きな交差点が、県道356号行方勝田線がぶつかるT字路で、平日白昼の交点は基本的に閑散としていて、忘れた頃に車両がやってくるという有様だ。主要県道と一般県道が交わる重要な交点ではあるが、そこには信号機のひとつもなく糞田舎らしくのんびりとしている。 |
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◆久賀地区の南側に認められる新旧道交点らしき二又 起点の宿場が出来過ぎで、本来の県道7号線は旧廃道とは無縁なのかも知れない。と思った矢先に旧道らしき道筋が唐突に現れた。そこは十数軒が身を寄せ合う小集落で、通常のドライブやツーリングでは気にも留めない片田舎の典型的な光景であるが、僕は迷わず1.5車線路へと舵を切る。 川沿いを走る二車線路と並走する狭隘路が一時代前の県道筋である事は、二又の線形を見る限り疑う余地がない。隠れた遺構が集落内に埋もれている可能性もあるので、面倒だが丁寧に拾っていくしかない。宿場の雰囲気を残す勝田が起点であるから、江戸時代の遺構が平然と鎮座しているかも知れない。 |
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◆久賀地区内の旧道筋に一軒だけ認められる商店跡 結論から言うと集落内に目ぼしい遺構は見当たらなかった。その代わりどの集落にも一軒は存在する商店が認められ、かつては2.5m幅の一車線路が本線であったと訴えている。この集落では中尾商店以外の店舗跡は見当たらず、唯一無二の小売店であった事が分かる。 この店が集落の中心であったのは間違いない。恐らく店の前にはバス停が置かれていただろう。現在この路線には美作市営バスが走っているが、古来民間のバスが走っていたと地元住民が教えてくれた。その昔からこの狭隘路を路線バスが日常的に往来していたのだ。 |
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◆久賀地区の北側新旧道交点より南を望む 新旧道の交点より振り返ると二車線路の沿道に人家は見当たらない。畑を潰して川岸に新設したバイパスに人影はなく、歩道の備わらない二車線路を時折自動車が我が物顔で爆走して行く。県道7号線の大方は現代規格の快走路に改められ、勝田が宿場であった当時の雰囲気はほとんど掻き消されている。 だが間違いなく当路線にはまだ僕等の知らない興味深い歴史的背景があるはずだ。我らがバイブルツーリングマップルで当路線はこのようなコメントが成されている。 昔は岡山と鳥取を結ぶ行商の道だった |
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◆県道同士の交点の直前右手に怪しい支線を捉える どこから引っ張ってきたのか定かでないが、担当者はこの道を古来より継承される陰陽道と心得ている。その証しに地図上では現在の路線名である智頭勝田線の文字よりも大きく“梶並往来”と記されている。 県道7号線=梶並往来 県界を跨ぐ行商の道、梶並往来。何かを期待せずにはいられないフレーズジャマイカ?今の所県道はその期待に応えていない。しかし右手峠が街道筋である以上、何等かの道路遺構があって然るべきだ。と思ったら早速それらしき代物が現れた。 |
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◆本線と支線と狭間に立つ常夜灯らしき古風な石造物 道路脇に佇む常夜灯がそれだ。往来と付くだけあって年代物の遺構があると睨んではいたが、そいつは草に埋もれるでもなく道路脇に平然と佇んでいた。単なる常夜灯か、始めはそう思っていた。しかし近付いてみると単なる常夜灯ではなかった。 左うて因幡 右梶並神社 この常夜灯は道標を兼ねている。現場は二又になっていて常夜灯兼道標は、確かに道のど真ん中にある。右の梶並神社はよしとして、左のうてとは読んで字の如し右手峠を指し、その先の因幡即ち鳥取県を終着地としている。 |
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◆行き先が刻まれる石灯篭は道標も兼ねている まさにこの常夜灯兼道標は街道筋に設置されたもので、梶並という神社名と地図上の往来名はピタリと符合する。その昔美作より北上する旅人は、この二又で梶並大社に参るか鳥取へ急ぐかの二択を迫られた。 今その二又を右に進む者は皆無であるが、一時期は自動車も右に舵を切っていた。何故そう言えるのか?それは右の小径が県道357号梶並立石線の旧道であるからだ。そう、この二又は元県道同士の交点でもあるのだ。 右手峠4へ進む 右手峠2へ戻る |