|
教育委員会が贈る歴史の道調査報告書、その傑作を補完して有り余る佳作、歴史の道踏査報告書〜古老の証言集〜 |
|
|
トップ>廃道>岡山>犬畑峠 |
|
|
犬畑峠(9) ★★★★★ |
|
|
犬畑峠(いぬはただわ)の取扱説明書 旭川の源流にして県下最大の貯水率を誇る湯原湖は、今日現在中国地方最大の水瓶として広く知られる。その知名度は今や全国区で、ダム直下の川原に湧く天然の湯に入らんと、休日ともなれば観光客がわんさと押し寄せ、芋洗い状態になる事も珍しくない。背後の巨大建造物と天然温泉のコラボは、日本広しと言えども滅多に御目にかかれるものではなく、有り得ないシュチュエーションは一見の価値がある。だが中国地方最大の人造湖の魅力は温泉だけに留まらない。ほとんどの人は気付いていないが、実は道路史的に大変興味深いエリアで、湖底には難破船の金銀財宝に匹敵する御宝道が眠っている。その片鱗は方々に散らばっており、全てを白日の下に晒した暁には、湯原・蒜山界隈の常識が覆るのは必至だ。新見夏の陣で大捕物を果たした今、県下最大のラビリンスと言っても過言ではない湯原湖。その牙城を崩すのは有名無実の峠と呼ばれて久しい犬畑峠。初動調査から実に3年の月日が流れたが、現場では我々の想像を凌駕する展開が待ち受けていた。当レポートは将来的に潜水艦を導入するきっかけになるかも知れない希有な機会である事を付け加えておこう。 |
|
|
|
◆やや不明瞭だが四輪の轍跡は奥へと伸びている 当山道を万年不通としている倒木群にメスを入れたのはこの私だ!と言いたいところだが、残念ながらそうではない。確かに僕はこの夏チェーンソーをぶん回し、100本近い木々を自らの手で解体してきた。建前は自らが所有する山林の開拓であったが、それには同時にある目論見があった。 他でもない廃道内の倒木除去である。現場主義なんだからいきなり実戦投入せい!という声も聞こえてきそうだが、一歩間違えば自らがジェイソンになり自爆しかねない危険行為であるから、僕はこの夏の山林開拓を自主トレと割り切り腕を磨いた。廃道内にチェーンソーを持ち込むノウハウは既に確立している。 |
|
|
◆基本的に草道だが確実に四輪が行き来している その成果は凄まじく、これまでの手作業による開墾は何だったのかと思うほどの劇的な改善で、開削に一ヶ月を要した余市⇔古平間の長大山道も、今なら漏れなく一週間で陥落させる自信がある。全ては効率的な廃道踏査をせんが為で、草刈機との併用でムテキングとなっている。 この夏を境に廃道内にチェーンソーを携行するのが必然となっていて、この日も当然の如し準備は万端であった。ところが現場にて僕は思いっきり肩透かしを喰らう。なんと僕が手を下そうとした倒木群が、物の見事になくなっていたのである。誰だ!僕が仕留める獲物を奪ったのは? |
|
|
◆般ピー&般車では怯むレベルの藪道と化す 普通の感覚なら倒木群がすっかり片付いている状況を目の当たりにしたら、小躍りして余裕シャキシャキで通過して行くに違いない。本来自分が請け負うはずの業務が既に完遂されているのだから当然と言えば当然だ。しかし僕は達成感及びスキルアップの機会を奪われたと感じ、素直に喜べなかった。 障害となる倒木が1、2本ならまだ許せるが、一箇所で数本が折り重なっている惨状もあり、手作業だとそれだけで数日は要する難局が機械化によってどれほどサクサクと進むものなのかを確かめる上で、当山道の導入部は格好の舞台となっていた。その有用な機会を奪われてしまったのである。 |
|
|
◆般車が余裕を持って引き返せる最終ポイントの膨らみ ただ山仕事のおいちゃん達には何の非もない。彼等は自分達にとって不都合な障害物を粛々と取り除いただけなのだ。ちょっと前の僕ならこの状況を快く受け入れただろう。よっしゃよっしゃ!と大はしゃぎの他力本願で、営林署もしくは森林組合の所業に安易に便乗していたのは間違いない。 チェーンソーの単独使用は業界の非常識で、山中で負傷した場合出血多量で逝く事例も少なくない。彼等は2人か3人が1組となって現場をやっつけているはずで、時間にして小一時間といったところか。僕一人でも半日で片付く規模であったから、彼等にとっては朝飯前だろう。 |
|
|
◆ほとんど緑の絨毯と化しているがダブルトラックは続く それにしても彼等の目的は何なのだろう?僕の知る限り当山道でタイヤ痕は見た例が無いし、これ以上四輪が入ったところでどうにもならない障壁が待ち受けている事も知っている。四輪だとどう足掻いたって通り抜けは叶わない。しかし軽四らしきタイヤ痕は延々と続いている。 倒木撤去は希少な機会を奪われたと同時に、作業の効率化が図られたという側面を併せ持つ。単純に突破だけが目的であるならば、これほど好都合なものはない。本来は僕が半日程度を要して黙々と丸切りせねばならないところを、体力を温存したまま森の奥へと足を延ばせるのだから。 |
|
|
◆狭い掘割内にも四輪の痕跡がはっきりと認められる しかし僕にとってこの状況はあまり好ましいものではなかった。これまで見た事もないタイヤ痕がある。それも昨日今日刻まれたかの如し生々しい痕跡だ。この先で山仕事のおいちゃん達に遭遇する確率は極めて高い。となると僕はほぼ間違いなく疑われるだろう。松茸を採りに来たのか?と。 単車で可能な限り奥地へ侵入し、山菜類が収容可能な箱を積んでいるのだから、松茸の密猟と思われても仕方がない。所持品がリュックのみであれば林道探索という云い訳も通用しそうだが、チェーンソーや草刈機を搭載しているとなると、限りなく怪しい存在に映るであろう事は間違いない。 |
|
|
◆切り通しのピークへと続く鮮明なダブルトラック 頼むから峠を越さないでいてくれ。僕は轍跡を睨みならが神に祈った。その意に反しこの先に待つ切り通しへと続く鮮明な軌跡が、廃道戦隊ワンレンジャーの近未来に暗い影を落とす。あの頂きの先に軽トラが停まっているかも知れない。 彼等と接触しても平穏無事に済む可能性があるが、何しに来たんじゃわれ?そこどかんかボケぇ!事と次第によっては激しいトークの銃撃戦も覚悟せねばなるまい。僕は切り通しの手前に単車を置き、徒歩にて恐る恐る近付いてみた。 犬畑峠10へ進む 犬畑峠8へ戻る |