教育委員会が贈る歴史の道調査報告書、その傑作を補完して有り余る佳作、歴史の道踏査報告書〜古老の証言集〜

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犬畑峠(8)

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犬畑峠(いぬはただわ)の取扱説明書

旭川の源流にして県下最大の貯水率を誇る湯原湖は、今日現在中国地方最大の水瓶として広く知られる。その知名度は今や全国区で、ダム直下の川原に湧く天然の湯に入らんと、休日ともなれば観光客がわんさと押し寄せ、芋洗い状態になる事も珍しくない。背後の巨大建造物と天然温泉のコラボは、日本広しと言えども滅多に御目にかかれるものではなく、有り得ないシュチュエーションは一見の価値がある。だが中国地方最大の人造湖の魅力は温泉だけに留まらない。ほとんどの人は気付いていないが、実は道路史的に大変興味深いエリアで、湖底には難破船の金銀財宝に匹敵する御宝道が眠っている。その片鱗は方々に散らばっており、全てを白日の下に晒した暁には、湯原・蒜山界隈の常識が覆るのは必至だ。新見夏の陣で大捕物を果たした今、県下最大のラビリンスと言っても過言ではない湯原湖。その牙城を崩すのは有名無実の峠と呼ばれて久しい犬畑峠。初動調査から実に3年の月日が流れたが、現場では我々の想像を凌駕する展開が待ち受けていた。当レポートは将来的に潜水艦を導入するきっかけになるかも知れない希有な機会である事を付け加えておこう。

 

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◆薄らとタイヤ痕は認められるが一般車では厳しい状況

当山道の起点は祝詞の何の変哲もない場所にある。周辺に目立った目印等は皆無で、余程気に掛けていないとナチュラルに通り過ぎてしまう。そして何事も無かったかのようにトンネルに至るのだ。その間に派生する枝道は幾つかあるのだが、この路線が一番際立っているのは確かだ。

際立っていると言っても意識して入口を求めていた場合で、頭の片隅この峠道の存在が無ければ完璧にスルーするのがオチだ。それくらい現場には交差点という雰囲気が全く漂っていない。ただ我らがバイブルツーリングマップルを携行している者は、地図から読み取る距離感によって一発で射止める事が叶う。

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◆限りなく路面状況は怪しいが車道は森の奥へと続く

恐らくそうやって何人もの好奇心旺盛な若者が、この未舗装路へと足を踏み入れたであろう事は容易に想像が付く。何故なら当山道は白線の実線で描かれ、峠名まで記されている至極真っ当な路であるからだ。驚くべき事にその白線は二重線表記となっている。そりゃぁ行ってみたくもなりまさぁねぇ。

近年のマップルはかなり改善されてきており、より現実に即した表記に改められている。かつてはいかにも普通に通れそうな表記となっていた道が、今では点線表記に改められている。黒尾峠然り、志戸坂峠然り、明地峠然りだ。四十曲峠に関しては今だ二重線で描かれるも、最早廃道とのコメントが付いている。

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◆しっかりと枝打ちされている為杉林の回廊は明るい

年度毎にツーリングマップルの信頼度が増す中で、怪しい道は排除され、そうでない道だけが表記されている。と普通はそのような解釈をする。従ってユーザーは当然の如し手持ちの地図を信じ、森の奥深くへと分け入る。そこで悲劇に見舞われるというパターンが御約束となって久しい。

地図を鵜呑みにして山道に分け入った結果、臨死体験に比肩する恐怖を味わったという旅人は枚挙に暇がない。僕達の知らない深谷幽谷で単身遭難し、自爆霊となっている事例も有り得なくはない話だ。五体満足で無事に帰還出来たらラッキーで、それ以外は心身共にフルボッコという恐ろしい世界である。

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◆小川を渡った所でタイヤ痕が極めて不鮮明となる

マップルには生命の危機に関わる重大な落とし穴がある事など一言も触れていない。それはあくまでも地図の内容を信じ切ったあなたが悪いと言わんばかりの勢いで、地図なのに道路情報以外の情報が拡充されつつある昨今、正すべき真の道路情報は二の次三の次と後回しになっている感は否めない。

僕みたいにハードな道程はウエルカムならまだいいが、そうでない場合がほとんどであろうから、ユーザーが地図に騙された感をいつまでも引き摺る可能性は高く、中にはトラウマになってしまう者もいるのではないか。そんな罪深きマップルであるが、期待通りにここでもきっちりとやらかしている。

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◆不明瞭となったタイヤ痕の輪郭が再び鮮明となる

見てくれ、この何とも心許無い小径を。当山道の特徴として進入路だけは割としっかりしていて、普通車でも攻略出来そうな一般林道を装っている。それは現在進行形で造林作業が進められているからであって、通常モードはのっけから藪に閉ざされているという事実を、大方の挑戦者は知らない。

当たり前だ、当山道にチャレンジする者のほぼ全てが、定点観測をしていないのだから。祝詞の起終点付近に採石が撒かれたのは遂最近の事で、転圧及び整地が成されたのもここ1、2年である。それ以前はのっけから藪に覆われ進入する気が失せる程の悪路で、この山道は完全に閉ざされていた。

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◆倒木を除去し四輪で突っ込んだ様子が窺える

多少の浅藪は平気という猛者であっても、進入して1分とせずに現れる第一倒木によって行く手を阻まれ、直ちに引き返しを余儀なくされる状況にあったし、それでも前進可能なチャリ派もしくは徒歩組が果敢に攻めるも行く先に待つ難問鬼門によって、挑戦者は奈落の底に突き落とされる運命にあった。

何つっても路上を席巻するスズメバチの巣が大敵で、かなり離れた場所でも偵察隊が威嚇しにやってくる始末。そこへ無防備で突っ込んでいったらどうなるかは言わずもがな。仮に死亡フラグが立っていない初めての方でも、集団で襲われ何回も何回も何回も何回も刺されたら、死亡遊戯は免れない。

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◆チェーンソーによる倒木除去はプロによる仕業

あれだけ動きの遅い雲に向かって遅いっ!と一喝する児玉清氏も、スズメバチの襲来に対しては早いっ!と相手の攻撃力を素直に認め、週末のサンデーモーニングではやや興奮気味にあっぱれを出すだろう。

その警告を無視して関係ね〜よ〜と萩原流ばりの勢いで無邪気に突っ込んでいったら、鈍器で殴られたかのような強打に意識を失いかけ、命からがら廃道地獄から脱出した出足平峠の悲劇は記憶に新しい。

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