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教育委員会が贈る歴史の道調査報告書、その傑作を補完して有り余る佳作、歴史の道踏査報告書〜古老の証言集〜 |
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トップ>廃道>岡山>犬畑峠 |
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犬畑峠(6) ★★★★★ |
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犬畑峠(いぬはただわ)の取扱説明書 旭川の源流にして県下最大の貯水率を誇る湯原湖は、今日現在中国地方最大の水瓶として広く知られる。その知名度は今や全国区で、ダム直下の川原に湧く天然の湯に入らんと、休日ともなれば観光客がわんさと押し寄せ、芋洗い状態になる事も珍しくない。背後の巨大建造物と天然温泉のコラボは、日本広しと言えども滅多に御目にかかれるものではなく、有り得ないシュチュエーションは一見の価値がある。だが中国地方最大の人造湖の魅力は温泉だけに留まらない。ほとんどの人は気付いていないが、実は道路史的に大変興味深いエリアで、湖底には難破船の金銀財宝に匹敵する御宝道が眠っている。その片鱗は方々に散らばっており、全てを白日の下に晒した暁には、湯原・蒜山界隈の常識が覆るのは必至だ。新見夏の陣で大捕物を果たした今、県下最大のラビリンスと言っても過言ではない湯原湖。その牙城を崩すのは有名無実の峠と呼ばれて久しい犬畑峠。初動調査から実に3年の月日が流れたが、現場では我々の想像を凌駕する展開が待ち受けていた。当レポートは将来的に潜水艦を導入するきっかけになるかも知れない希有な機会である事を付け加えておこう。 |
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◆藤森側と瓜二つの蒜山側旧土伏隧道坑口 現在の土伏トンネルに於いて洞内で車両同士が擦れ違うのは稀だ。通勤通学のラッシュ時は重なる事もあろうが、日中の大半は上下線のどちらか一方に車両の姿があるのが基本で、24時間調査をしないと何とも言えないが、洞内離合は滅多に御目に掛れるものではない。 そういう現実を目の当たりにしてしまうと、騙し騙し旧トンネルを使い続けても良かったのではないか。但し旧トンネルにはクラックや白化が目立ち、遅かれ早かれ大規模な修繕が必要な状態にはある。現に内部は一部剥離崩壊が進んでいて、規模は小さいが落盤の予兆は確実に認められる。 |
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◆藤森側同様竣工年入り銘板が埋め込まれている 先人達が築いた遺産を改良しつつ長く使い続けるのが良いのか、はたまた今後数十年間はメンテナンスフリーの安心安全が約束された新洞を設けるのが良いのかは議論が分かれるであろうが、ここ土伏隧道に関しては今日現在大規模な落盤が認められない以上、供用し続けられた感は否めない。 必要最小限の補修を以て管理し続けられたのではないかと思う。洞内は竣工当初こそ岩盤剥き出しであったものが、前後から内壁の覆工処理が施され、中心付近もモルタルが吹き付けられている。それを見る限り徐々にではあるが改修の手が入っていたのが分かる。 |
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◆真庭市に統合される以前の川上村の標識が佇む 昭和年間はそれで何とか間に合わせようと努力した形跡が認められるが、流石に時代の波には逆らえなかったのだろう。洞内で普通車同士がまともに擦れ違えないボトルネックの解消は早晩議題に上がる問題で、抜本的な改善策は不可避な情勢であったのは間違いない。 結果として補強に次ぐ補給というその場凌ぎ的な施策を諦め、ゼロベースの新洞を設ける事で決着したのであろう。出入り口付近は南北共にカーブを描いていて、見通しはほとんど利かない。そういった諸問題も含め高規格トンネルの建設は必然という空気になっていたのかも知れない。 |
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◆藤森側に負けず劣らずの藪道と化した旧道 土伏隧道は北側坑口にも銘板が埋め込まれ、南側同様竣工年が刻まれていた。そこでもやはり“和”と“十”の間が読み取れない。これを見る限り何等かの外的要因で判読不能なのではなく、達筆過ぎて凡人には?が付いてしまうのであって、見る者が見ればあっさりと認識出来るに違いない。 ポータルとの照合で漢数字の三というのが妥当と思われるがどうだろう?そこで道路トンネル大鑑で確かめると、竣工年が昭和30年となっていた。因みに編纂が成された昭和43年当時の土伏隧道は素掘りで、路面は未舗装となっている。まだオリンピックが終わって間もない時分である。 |
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◆舗装済の県道跡とは思えない常軌を逸した光景 恐らく坑門だけが無機質な量産型のコンクリ製で、その他は岩盤剥き出しのままであったのだろう。その頃の隧道は県の内外を問わずどれも似たり寄ったりであるから全く驚くに値しない。むしろ現在の容姿がその当時とほとんど変化無く今に至っている事に驚きを隠せない。 昭和30年頃の様子を今に伝える土伏隧道。そこは今や自然に還りつつあり、そう簡単に近付けない秘境と化している。隧道自体は閉経を免れた為、物理的に通り抜けは叶うが、わざわざ拝みに来るほど御宝物件でもなく、旧廃物件としては最下級レベルにあるから、本来であればパスする物件である。 |
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◆一部は完全にジャングルと化した密林地帯宛らの様相 しかし僕はこれまでになく執拗に現場を精査した。旧道の滞在時間は過去最高となる。旧道踏破の目的はこれまでと違って単なる通り抜けではない。第三の路が眠っているか否かを確かめる事にあった。何故なら土伏隧道の開通以前はどうしていたのかという疑問が解消されていないからだ。 旧道のどこかに旧旧道の入口があるのではないか?そう睨んだ僕は旧道脇の激藪を徹底的に調べた。しかしそれらしきものは何も見当たらない。現道の脇も広範囲に調べたが、旧旧道らしき道筋は認められなかった。怪しい道は100%徹底して潰したと言えば嘘になる。 |
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◆常識人だと進入する気になれない新旧道の交点 現道脇に作業道らしき道は幾つか認められたが、そのどれもが作業道の域を出るものではなく、また古道臭も感じられない。昭和30年以前に使われていた雰囲気はまるで感じられない。そういった類の道は鼻からパスしている。 従って玉金全力投球したのかと言えばそうではない。しかし新旧トンネル付近を精査した今、親子二代が並ぶトンネル付近にそれらしき道筋は存在しないという確信めいたものがあった。何故なら僕には他に心当たりがあったからだ。 犬畑峠7へ進む 犬畑峠5へ戻る |