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教育委員会が贈る歴史の道調査報告書、その傑作を補完して有り余る佳作、歴史の道踏査報告書〜古老の証言集〜 |
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トップ>廃道>岡山>犬畑峠 |
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犬畑峠(3) ★★★★★ |
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犬畑峠(いぬはただわ)の取扱説明書 旭川の源流にして県下最大の貯水率を誇る湯原湖は、今日現在中国地方最大の水瓶として広く知られる。その知名度は今や全国区で、ダム直下の川原に湧く天然の湯に入らんと、休日ともなれば観光客がわんさと押し寄せ、芋洗い状態になる事も珍しくない。背後の巨大建造物と天然温泉のコラボは、日本広しと言えども滅多に御目にかかれるものではなく、有り得ないシュチュエーションは一見の価値がある。だが中国地方最大の人造湖の魅力は温泉だけに留まらない。ほとんどの人は気付いていないが、実は道路史的に大変興味深いエリアで、湖底には難破船の金銀財宝に匹敵する御宝道が眠っている。その片鱗は方々に散らばっており、全てを白日の下に晒した暁には、湯原・蒜山界隈の常識が覆るのは必至だ。新見夏の陣で大捕物を果たした今、県下最大のラビリンスと言っても過言ではない湯原湖。その牙城を崩すのは有名無実の峠と呼ばれて久しい犬畑峠。初動調査から実に3年の月日が流れたが、現場では我々の想像を凌駕する展開が待ち受けていた。当レポートは将来的に潜水艦を導入するきっかけになるかも知れない希有な機会である事を付け加えておこう。 |
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◆藤森側の土管状とは異なる土伏トンネル蒜山側坑口 県道322号線上にあるトンネルの銘板には土伏とある。前後の意匠はまるで異なり、蒜山側は一定のデザイン性が認められるが片や土管を連想させるから、同じトンネルなのに豪い違いだ。標高700mに迫る天狗山を僅かに掠めるトンネルは、280mの延長を誇る。 300mに満たない短隧道ではあるが、南北共に稜線は手の届かない高みにあるので、トンネルを穿つのは正解というかそれ以外に選択肢は無かったように感じられる。尤もトンネルあるとこ旧道アリの鉄則に従えば、稜線を直に跨ぐ越境ルートはあって然るべきだし、僕にとっては必要不可欠な存在だ。 |
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◆トンネルを抜けた後もしばらくは二車線の快走路が続く しかし本邦初の車道がトンネルでしたという物件もある中で、ここ土伏トンネルに旧道が存在しないという可能性も無くはない。尤も土伏トンネルには完全無欠な旧道筋がある。それは我らがバイブルツーリングマップルにも記載され、またまたネタバレになってしまうが現在のトンネルは二代目に当たる。 土伏トンネルには先代が存在するのである。初代の隧道はそれはそれで調査対象として成立するが、それ以前はどこをどう通っていたんですか?という質問には答えていない。そのヒントが得られてこその歴史の道であるが、残念ながら現道脇にはその欠片も認められない。 |
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◆道路の左右に旧道と思わしき道筋は見当たらない 僕はある程度の状況を把握している旧トンネルをスルーし、ひたすら現道に繋がるであろう旧旧道の在り処を探っていた。しかし藪の中に目を凝らしてもそれらしき道は見当たらない。ってか皆目見当が付かないと言った方が正しい。これが全く以て分からないのである。 何もかもか手探り状況の中で、徒歩による県道脇の探索が続けられた。時折通過する地元車両に怪しい目で睨まれ、中には停まってこちらの動きを監視する車両もあった。旧トンネルに不法投棄された等の嫌な経験があるからだろうか、何だか他の地区と異なり非常に警戒心が強い。 |
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◆蒜山側で迎える第一人家は乳牛牧場 御蔭で思う様に身動きが取れず、たいした成果も上がらなかった。徒歩移動している人間が余程珍しいのか、減速して何をしているのか確かめるドライバーまで現れる始末。もうこうなるとパトカーが飛んでくるのは時間の問題で、その前段階として早くも真庭市のパトロールカーが現れた。 確かに僕の存在は目立っていた。トンネルの前後に長時間に渡り居座り、何をするでもなく徘徊しているのである。僕は歴とした道路調査をしているつもりだが、通行人はそうは思わない。少なくとも地元民は警戒感を露わにしている。特に歩行者が皆無に等しい県道上で、僕の存在は違和感アリアリであった。 |
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◆牧場を機に数軒の人家が認められるがその数は疎ら 職務質問に対し某元兵庫県議のように喚き散らして事態の収拾を図るという方法も無くはないが、ふなっしー並みの奇声を間に噛ます術は常人ではなかなか会得し難く、空出張でない事を粛々と説明するより他ない。トンネル脇のどこかに存在するであろう旧道筋を探索しに来たのだと。 まあそれ事態も一般人の感覚では理解し難いものがあるが、丁寧に説明すれば理解してもらえる可能性があるし、何等かの情報が齎される場面も期待される。だがしかし現場には会話を交わそうにも肝心の人家が見当たらない。現場にはたった一軒の酪農家があるのみと極めて限定的だ。 |
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◆進行方向の視界前方に中央分水嶺の山並みが聳える かなり下った所に集落が認められるが、そこはもう蒜山が目と鼻の先に位置する城山の裾野で、現場はトンネルから2km以上も離れている事から、有益な情報は期待できなさそうな雲行きである。何故これほどまでにトンネルと集落が距離を隔てているのか不思議でならない。 親子二代に亘る歴史ある峠道に於いて、沿道に疎らな人家がもっとあっていいはずだが、結果的に人々はその前後に根付かなかった。考えてみれば峠下にあたる藤森集落以降人の気配がまるでない。かつて人が暮らしていたような痕跡すら皆無に等しい。あるのは蒜山側の牧場唯一軒のみである。 |
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◆県道324号東茅部下福田線との交点 そりゃぁ他所者が徘徊してたら目立ちまさぁねぇ。全く成果が得られない中で、起終点となる県道324号線との交点であれこれと考えてみた。親子二代トンネルという歴史ある県道筋に人々が根付かなかったのは何故だろう? ひとつの仮説としてゼロベースで設けた新設路線というのが思い付くが、その前提として初代の隧道が明治・大正期の古洞でないと証明する必要がある。親子二代共に昭和道であると。何はともあれ旧トンネルを精査せねばなるまい。 犬畑峠4へ進む 犬畑峠2へ戻る |