|
教育委員会が贈る歴史の道調査報告書、その傑作を補完して有り余る佳作、歴史の道踏査報告書〜古老の証言集〜 |
|
|
トップ>廃道>岡山>犬畑峠 |
|
|
犬畑峠(2) ★★★★★ |
|
|
犬畑峠(いぬはただわ)の取扱説明書 旭川の源流にして県下最大の貯水率を誇る湯原湖は、今日現在中国地方最大の水瓶として広く知られる。その知名度は今や全国区で、ダム直下の川原に湧く天然の湯に入らんと、休日ともなれば観光客がわんさと押し寄せ、芋洗い状態になる事も珍しくない。背後の巨大建造物と天然温泉のコラボは、日本広しと言えども滅多に御目にかかれるものではなく、有り得ないシュチュエーションは一見の価値がある。だが中国地方最大の人造湖の魅力は温泉だけに留まらない。ほとんどの人は気付いていないが、実は道路史的に大変興味深いエリアで、湖底には難破船の金銀財宝に匹敵する御宝道が眠っている。その片鱗は方々に散らばっており、全てを白日の下に晒した暁には、湯原・蒜山界隈の常識が覆るのは必至だ。新見夏の陣で大捕物を果たした今、県下最大のラビリンスと言っても過言ではない湯原湖。その牙城を崩すのは有名無実の峠と呼ばれて久しい犬畑峠。初動調査から実に3年の月日が流れたが、現場では我々の想像を凌駕する展開が待ち受けていた。当レポートは将来的に潜水艦を導入するきっかけになるかも知れない希有な機会である事を付け加えておこう。 |
|
|
|
◆藤森集落内の十字路に派手な案内板等はない 当然の如し県道の本線上に停止線は無く、停まれの指示があるのは四方向のうち県道を除いた二方向で、どちらも一介の市町村道レベルの道に過ぎない。共に大型車一台が通れば二進も三進も行かない狭隘路で、合流する県道筋も威張れたものではないが、部分的に二車線幅を有する優位性が認められる。 その昔は県道筋も市町村道と見分けの付かないレベルにあったのであろうが、今やその差は歴然としていて、断続的ではあるが県道はセンターライン付きの完全な二車線路を形成する。このような僻地で市町村道の二車線化など夢のまた夢であるから、車線の規模が優劣を見分けるバロメーターとなる。 |
|
|
◆バイパス化が期待される藤森集落内を伝う狭隘路 但し県道322号線の規格が他を大きく引き離している訳ではなく、御覧のように藤森の集落内は旧態依然とした状態で、普通車同士の擦れ違いがやっとの狭隘区を、大型車が互いの動向を確かめつつ集落内を慎重に行き来している。そこにバイパス化の兆候は見られない。 高速道路をアンダーパスする前後はほぼ完璧な二車線を誇り、脇にはそれ以前に使われていた旧道の残骸が認められる県道であるが、一時代前はほぼ全線が1〜1.5車線の狭隘路で、標識やデリネーターが無ければ県道と気付かないレベルであったのはほぼ間違いない。 |
|
|
◆県道は集落外れのヘアピンカーブで高度を一気に稼ぐ 1.5車線と2車線が断続的に続く県道筋であるが、藤森集落の外れからは完成して間もない二車線路に切り替わり、勢いそのままに路は山間部へと潜り込む。ヘアピンカーブを駆使した線形はこれより挑む峠の険しさを象徴し、重機がフル稼働で成形する崩壊現場がそれを後押しする。 その昔は馬車道よろしく究極のカーブを描いていたのだろうか?はたまた更なる険しい山道が山中のどこかに眠っているのだろうか?そんなこんなを思いながら登坂していると、ふとある事に気付く。この路線には全くと言っていいほど旧道の残骸が見当たらないのだ。 |
|
|
◆S字カーブやスラロームを駆使してぐんぐん上り詰める それは特別珍しい事ではないけれど、どうにも腑に落ちないものがあった。ネタバレになってしまうが、この先にはトンネルが待ち構えている。トンネルあるとこ旧道アリの鉄則に従えば、道路脇には何等かの遺構が認められて然るべきである。しかしこの峠道にはそれらしいものが確認出来ない。 道中は右へ左へと小刻みなカーブの連続で、直線とは無縁の道程となっている。眼下には藤森の集落を見据え、山肌を縫って高度をぐんぐんと増していく。ツーリングマップルではたった2回のヘアピンで、頂上付近へ到達するかの如し描かれているが、そんな事はない。 |
|
|
◆頂上の手前にあるF1のピットの如し派手な旧道の残骸 S字にヘアピンにスラロームを駆使したカーブの連続は、夜な夜な現れるお兄たまお姉たまの格好の舞台で、道中にはアクシデント発生時のピットまで用意されている。勿論それは旧道の残骸に起因する偶然の産物に過ぎないが、三原じゅん子センセーも往年の血が騒ぐなかなかの出来にある。 登り途中でようやくめっけた旧道の残骸であるが、車線の振り幅が余りにも大き過ぎて、大型車四台が並んでお釣りがくる実質四車線という幅広道の真只中で、僕はあるはずのない旧旧道の残骸を求め崖下に目を凝らした。そこに古道らしき道筋の存在は一切認められない。 |
|
|
◆巨大な膨らみの直後に待つトンネルはまるで土管の様 あるのは45度の傾斜で滑り降りる急斜面のみである。急崖の先には黒い穴がぽっかりと口を開け、時折車両を吸い込んでは吐き出しを繰り返している。無呼吸症候群に悩む旧廃トンネルとは異なり、正面のトンネルには現役バリバリのサラリーマンの如し生命力が感じられる。 車両の多くはこの穴蔵を豪快に駆け抜け、難所を越えたと感じるドライバーはほとんどいないであろう。ただここに至るまでの過程は並々ならぬものがあり、トルクのない車両はエンジンが悲鳴を上げながらの登坂となる。従って折紙付きの急坂を以て人々は少なからず峠越えを意識する。 |
|
|
◆近代的な高規格トンネルだが歩道は備わらない しかし大型車同士の洞内離合を許す高規格トンネルが、そこに至るまでの労力を打ち消してしまう為、エンジン駆動車を操る者の記憶には難所とは刻まれ難い。今日現在ここを峠と意識するのはチャリダーくらいのものだ。 近代的なトンネルの割には真っ当な歩道を備えない理不尽さも相俟って、チャリ派にとっては何だかな〜by阿藤海感は否めないが、トンネルを抜けると高原であったという非日常性が、その不都合さえも打ち消すのが蒜山の成せる業である。 犬畑峠3へ進む 犬畑峠1へ戻る |