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教育委員会が贈る歴史の道調査報告書、その傑作を補完して有り余る佳作、歴史の道踏査報告書〜古老の証言集〜 |
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トップ>旧道>岡山>九の坂 |
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九の坂(9) ★★★★ |
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九の坂(きゅうのさか)の取扱説明書 この峠に魅せられ現場を訪れる者は後を絶たない。遠くははるばる関東圏から遠征するくらいであるから、余程この峠には人を引き寄せる何かがあるのだろう。かくいう僕も東京から遠征したくちで、今でこそ現場は目と鼻の先に位置するが、かつてはそう簡単に行けない彼の地にあった。それでも遠征先のリスト入りを果たしたのは、先駆者を奈落の底に突き落とした数々の伝説があるからだ。その多くはマイカーによるチャレンジで、挑んだ者のほぼ全てがヒーハー!と雄叫びをあげる難所で、そこはディズニーランドも真っ青の大人のアトラクションが展開しているという。そう聞けば行きたくなるのが人情というもので、事実二輪による挑戦にも拘らず、楽勝という訳にはいかなかった。流石全国区の逝かれ道である。その時の印象は単にハードな道で、それ以上でもそれ以下でもない。ただ歴史的背景に目を転じた瞬間?が三つ並んでしまい、突破が目的の当時の僕にとってこの難題は余りにも荷が重過ぎた。しかし道路格闘家のみならず道路交通史家としての経験を積み上げた今なら、九の坂を筆頭とするこの界隈の交通事情の包括的な解明は必至で、迷宮が迷宮でなくなる時が遂にやってきた。今宵ラビリンス九の坂の全てを白日の下に晒そう。 |
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◆ 予てから僕はその存在に気付いてはいたものの、それが何に結び付くのかなど考えもしなかったし、その時はただただ五体満足で脱出する事だけに意識が集中していた。徒歩での縦走であれば多少は考察する余裕もあったであろうが、あの時は倒木の除去と落石を避けるので精一杯だった。 しかし今回は以前に比べ随分と状況が改善されていて、パッと見は落石&枯れ枝が散乱する荒れ放題の路であるが、何者かの手によって排除されたのだろう、通行を阻止する厄介な倒木群は見当たらないし、あっても小道具無しで対処出来る状態にあるから、四輪でもやってやれない事はない。 |
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◆ 舗装路と思うからイレギュラーな現況に怯むのであって、最初から未舗装路と思えば楽勝コースに見えなくもない。ただ落ち葉の隙間から時折顔を覗かすアスファルトが、ここは列記とした舗装路でっせ!と主張し、遅かれ早かれ異常事態を意識する事にはなる。 唯一の救いは神代側は対向車を意識せずに済む事で、GWや盆等の挑戦者が一極集中しそうなアニバーサリーを除けば、九の坂の神代側で対向車と擦れ違う事はまず有り得ない。従って挑戦者は落石の撤去や倒木の除去に意識が集中でき、余計な神経を擦り減らさずに済む。 |
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◆ それがメリットと言えるのかどうかは微妙なところだが、精神的に追い詰められた状態で更なる精神的負担が圧し掛かるのは心臓に良くない。唯でさえ吐き気を催す危機的状況なのに唇お化けが現れて、ここ何日も飯が喉通らんとか近況を報告されても、御愁傷様でしたとしか言い様がない。 また手ノコで必至こいて倒木を切断している最中に、耳元でダメよ〜ダメダメ!とか言われても、そう簡単に手を止める訳にはいかない。夏休みを除く平日であればまず人と擦れ違う事はなく、プラス作用がほとんど期待出来ない第三者との遭遇は、このような場面では可能な限り避けるのが無難だ。 |
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◆ 極限状態では目の前の障害をいかに克服するかに全神経を集中するが、今回は小道具を出す場面がほとんど無いに等しく、路肩から足を踏み外す初歩的ミスだけ気を付けていれば、苦もなく通り抜けられる状態に補正されている。その状況をいつまで保てるかは神のみぞ知るだ。 台風を一発でもまともに喰らえば以前と同等か、それ以上の劣悪な環境に陥るのは間違いなく、管理者たる新見市はこれまで同様自然復旧を願うか、異端児の突破による副産物としての一時的な改善を期待するかのどちらかで、本格的な管理に乗り出す気はさらさら無い。 |
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◆ この峠道に関して新見市が放置プレイを決め込んでいるのは子供でも分かる話で、掃き掃除ひとつしない山道はほとんど未舗装路に還りつつある。このまま落ち葉や倒木が堆積し続ければ、そう遠くない将来にこの峠道は、四駆&オフ車しか通れない土道と化すだろう。 土砂と落ち葉と枯れ枝と倒木と落石が混ざり合う路面は、恐らく当山道が拓かれた当時に近い状況に酷似していると思われ、まだバラスも撒かれていない砂利道未満の窮状は、ある意味経験したくともなかなか出来ない未体験ゾーンの可能性が大だ。完全なる土道などそう御目にかかれるものではない。 |
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◆ 現代でバラスの撒かれていない道など、明治年間に現役を退いた古道かブル道くらいしか思い付かない。現場はアスファルトの基盤を有し、今すぐどうこうという事はないであろうが塵も積もれば山となるから、このまま市が放置プレイに徹すれば完全なる土道の出来上がりだ。 それはそれで秘境感が一割増しとなり、挑戦者魂に火を付ける事になるのだろうが、それは同時に明治道への自然回帰も兼ねている。アスファルトは厚さ5cm程度の単なる膜に過ぎず、簡易舗装は経年劣化により罅割れ、その後粉砕する。この状態であれば早晩開削当時の状態に戻るだろう。 |
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◆ この山道を大量の荷馬車が往来した当時の状況に帰化する。それが管理者の真の狙いとは到底思えないが、事実としてそうなる過程を辿っている。ある意味それは当山道が最も輝いた黄金期の復活とも言える。 この峠道が開削された真の目的を知る者は少ない。この峠道を点と捉えている間は何も見えない。しかし線と捉えた瞬間見えなかったものが見えてくる。この山道が米子へと通じる長大幹線路の一部と知った時、僕は愕然とした。 九の坂10へ進む 九の坂8へ戻る |