教育委員会が贈る歴史の道調査報告書、その傑作を補完して有り余る佳作、歴史の道踏査報告書〜古老の証言集〜

トップ>旧道>岡山>多和山峠

多和山峠(2)

★★★

多和山峠(たわやまとうげ)の取扱説明書

瀬戸内と日本海を結ぶ地味な国道313号線の道中で、最難所と言えば犬挟峠で異論はないと思われるが、それと双璧を成すとされる難所がある。それが真庭市と有漢町の市町界を隔てる多和山峠だ。僕は最近まで気付かなかった、峠名の多和が乢とイコールである事に。平仮名表記にして初めてそれを意識する事になるが、それが単なる思い込みでない事実を後に知る事となる。多和山峠は古くは峠山峠と表記され、上から読んでも山本山、下から読んでも山本山のキャッチフレーズ同様、上から読んでも下から読んでも峠山峠である事が調査過程で判明する。この衝撃の事実はロイター通信を介しアメリカ全土に発信され、全米を震撼させた。今でこそ誰もが発狂せずに済むように多和の文字が宛がわれているが、古来多和山峠は峠山峠が正式名称であり、漢字では誤魔化せても平仮名では誤魔化せない。たわやまとうげは読んで字の如し峠&山&峠と山深さを前面に押し出しており、多和山峠表記ではけして読み解けない難所である事を、昔の人は身を以て知っていたのだ。果たして峠を連呼する程の難所とはどのようなものなのか?その実態を白日の下に晒そう。

 

DSC02150.jpg

◆北房側より国道313号線の新旧道交点を捉える

多和山トンネルで市町界を跨ぐと、平地へ向けて一目散に駆け下りた先で、県道78号長屋賀用線との交点に差し掛かる。今でこその場所は国道313号線と主要県道の分岐点となっているが、一時代前は県道78号線の単なる通過点に過ぎなかった。その証拠が交点の2km先にある。

何でもないような場所に青看が佇んでいて、それも上下線共にであるから、その不自然さに足を止めずにはいられない。真庭方面も高梁方面も共に支線の行く先は塗り潰されており、意味深な案内板に首を傾げざるを得ない。何なんだこれは?これが大方のドライバーの自然な反応であろう。

DSC02151.jpg

◆かつて国道を名乗った車道は歩道に転用されている

上下線共にわざわざ案内板を設置しておきながら、枝分かれする支線の先を非表示とするイレギュラーな状態に、一般の感覚であれば戸惑いを隠せない。この世界にどっぷり浸かっている者であれば、その正体が何なのかは瞬時に見抜けるが、そうでなければ理解し難い奇妙なオブジェに映るだろう。

そう、それは般ピーにとっては非常に厄介な代物で、可能であれば速やかに撤去すべき紛らわしい標識である。考えてみて欲しい。ここは案内板を設置するほどの重要な交差点だよ、行き先は教えないけどね!何なんだこのドライバーを惑わす思わせぶりな案内板は?

DSC02152.jpg

◆第二の青看は矢印が貼り替えられ全て右斜め上を指す

まるで寂しい時はいつでも呼んでくれ、俺は行かないけどね!の迷言を残したお塩先生ばりの肩透かしではないか。見てくれ、青看の先にひっそりと佇むもうひとつの青看を。全ての矢印が右斜め上を指している。そんな案内板に一体全体何の意味があるというのか?

それだったらわざわざ案内板を設置しなくてもいんでないかい?麦藁帽子を被って畑仕事に精を出す近隣住民の素朴なツッコミが聞こえてきそうだ。しかし謎の青看に対し誰もが無関心を装っている。大いなる違和感を覚えるドライバーに対し、地元民はまるで空気のようにそいつを意識しない。

DSC02155.jpg

◆旧道に足を踏み入れると国道が直進していた事が分かる

彼等はそれが“本線”であると知っているからだ。通りすがりのドライバーには謎の支線が枝分かれする不可解な交点と映るが、地元民は例外なく誰もが知っている。そこが国道313号線の新旧道交点であると。その証拠に分離する支線は、真庭方面からの直線の延長線上にある。

それは一時代前の国道313号線が、この交点を直進していた事を意味する。二枚目の青看には、福山84km高梁21kmとの表示があるが、そのどちらも矢印が貼り替えられている。対して8km中井の矢印は変更された形跡がない。それは中井方面だけは青看が設置された当時のままである証左だ。

DSC02158.jpg

◆警戒標識やデリネーターなど道路付帯設備が目立つ

中井方面だけは設置当時のままで、福山&高梁方面だけが矢印を貼り替えられている。裏を返せばかつての矢印は真上を指し、直進が本線であった事を物語る。即ち高梁とその先の福山へ行くには直進が本線で、中井方面のみが右折であると。それは過去に重要な交点であった事を意味する。

今でこそ国道313号線と県道78号線の交点は、峠道が平地へと着地する高岡神社付近にあるが、かつての交点は2kmほど北上した地点にあったのだ。謎の交差点の正体は一時代前の国道313号線と県道78号線の交点である。そう解釈出来れば全ての辻褄が合う。

DSC02160.jpg

◆滑り出しこそ二車線幅であった幅員が徐々に狭まる

市道のくせにやたらと標識が多いのもそうだし、市道のくせにデリネーターに岡山県と刷られているのもそうだし、地元民が無関心を装っているのもそう。全ては謎の支線が一時代前の国道で、どうせ峠を越した先で再び現道と重なるのだから、混乱を招くような表示はしない方が良いとの判断なのかも知れない。

考えてみれば旧道筋を積極的にアピールする自治体は少ない。現道ほど管理が行き届いてはいないから、なるべく現国道筋を利用して欲しいと思っているし、夜な夜な産業廃棄物を投棄しにやってくる悪徳業者の温床にもなるから、叶うなら封鎖したいというのが本音であろう。

DSC02162.jpg

◆L字状で豪快にカーブを描くと本格的な山岳道路と化す

しかし旧道筋に一軒でも人家があれば、災害の度に修繕もしなければならないし、いつ何時住民が出入りするか分からないから、夜間封鎖等の措置も講じられない。従って24時間365日フルオープンにしておくしかない。

1日にたった数台の車両が往来する為だけに存在する、それが旧道と化して久しい多和山峠の現実である。土日祝は余暇を楽しむ者達で賑わうのかも知れないが、平日は擦れ違う車両が皆無に等しく、現場では閑古鳥が鳴いている。

多和山峠3へ進む

多和山峠1へ戻る

トップ>多和山峠に関するエピソードやご意見ご感想などありましたら一言どうぞ>元号一覧