教育委員会が贈る歴史の道調査報告書、その傑作を補完して有り余る佳作、歴史の道踏査報告書〜古老の証言集〜

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東山峠(17)

★★★

東山峠(ひがしやまとうげ)の取扱説明書

我らがバイブルツーリングマップルに未記載の峠が数多存在する事に気付いて久しい。個々の理由は定かでないが、廃道のような危険な道については警察から載せてくれるなとの要請があったと聞くし、紙面上のキャパの問題もあろう。ただバスの停留所に峠名がそのまま採用されている場合、未掲載というのはどうにも腑に落ちない。それも県民なら知らない者はいないという知名度を誇る東山峠とあらば、意図的に排除したと捉えられても致し方ない。新幹線停車駅から僅か3kmの至近距離、且つ県内屈指の交通量を誇る主要路ときているから、県民感情としては全く以て看過出来ない。現場は市街地から山を越え市街地へ至る紛れもない峠道で、いかなる車両もそれなりのストレスを伴う峠然とした道程だ。県を代表する峠が市販の地図に未掲載というギャップを埋められるかどうかは定かでないが、普段意識せずに行き来するこの峠道に対する県民の見方が、報告書を一読する前と後でガラリ一変するであろう事だけは間違いない。

 

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◆始動ポイントの歩道橋より峠と東山公園方向を捉える

一周廻って再び始動ポイントの岡山電気軌道東山・おかでんミュージアム駅停留所を見下ろせる歩道橋に舞い戻ってきた。乗合自動車が走った旧道、並びに現在供用中の昭和新道の足跡を辿り歴史的背景を知る事で、東山峠への認識はこれまでと比べ様もないほどに深まった。

タイムリーな出来事として岡電の岡山駅乗り入れ工事が佳境を迎え、新幹線と直結する便利さはインバウンドの引き上げに寄与するであろうし、ここにきてハレノワ線の新規事業にゴーサインが出た事で、近い将来路面電車の環状化が実現し、利便性の向上により更なる集客効果が見込めよう。

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◆東山車庫で待機中の世界一高価な市電のチャギントン

また昨今環境負荷への懸念から世界的に鉄道輸送への回帰が顕著で、我が国でも地方都市に於ける路面電車の新設・延伸工事が地味に進展しており、都市中心部に人物を集約するコンパクトシティ化に小回りの利く路面電車の親和性は高く、SDGsの観点からも市電の発達発展の余地は十二分にあろう。

事実岡山市では事業計画として岡山駅と岡山大学を結ぶ新規路線の青写真を描いているし、御隣の広島では高架式で駅の二階に市電をぶち込む大胆な施策で、路面電車の既存概念を打ち破る画期的な仕様は市民の度肝を抜いたが、岡山も負けてはいない。当地には秘密兵器がある。それがチャギントンだ。

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◆岡山が世界に誇る唯一無二のアミューズメントトレイン

走るディズニーランドとも形容されるチャギントンは、あの豪華寝台特急ななつ星を手掛けた水戸岡鋭治氏が手掛けた傑作で、実際のレールを走るブルースター&ウイルソン号の総工費は5億と常軌を逸している。職人が鉄板を叩いて丸みを出す工法は、かつてのボンバスを製造する工程のまさにそれだ。

この唯一無二の車両を生み出した岡山電気軌道株式会社の松田久氏は、一般車両価格の二倍の巨費を投じた事に対し、周囲から道楽と揶揄されるも全く動じない。それには訳がある。岡山を乗り物の一大テーマパークにしたいという強い思いがあるからだ。その意志は代々脈々と受け継がれている。

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◆東山公園の入口より真直ぐに市街地へと伸びる県道

父親は和歌山の潰れかかった南海電気鉄道貴志川線を買い取り、駅長に猫(たま)を配す離れ業で一世を風靡した小嶋光信で、巷では公共交通再生請負人と称される人物のDNAを継承しているから、その本気度は折紙付だ。あくまでもチャギントンは氏の描く壮大な計画の一端に過ぎない。

岡山市内で路面電車の勢力拡大を目論む岡電の強力な援軍となるのが両備ホールディングスで、道楽と罵られるチャギントンの具現化も快諾している。そりゃそうだ、両備HDは岡電の筆頭株主なのだから。思い出してほしい、西大寺鉄道廃業時の涙の悔しいです!か〜ら〜の〜チャギントン。

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◆東山公園を避けるようにY字状に路は二手に分かれる

どこまでしたたかに喰い込んでんだっつーの。肉を切らせて骨を断つバス事業転換の離れ業のみならず、いつの間にやら岡電も支配下に置くとは。両備ホールディングス、恐るべし。その両備HDの筆頭株主が岡電で、両者はウインウインの関係にある。即ちこの界隈の交通は両備グループに牛耳られている。

西大寺のドル箱路線に加え市電まで押さえられているとなると、最早他社の付け入る余地は無い。ここまでの巨大グループになると、何等かの抵抗を試みるより逆玉狙いで行くしかない。遺産狙いで華麗なる創業家一族に喰い込み、そこそこのポジションで機を窺う。加齢なる一族の僕チンはそう考える。

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◆明治時代に掘り割られたであろう巨大なオープンカット

さて、どうやって喰い込むか?小嶋・松田親子は代々交通畑で来ている。そして猫駅長にチャギントンと奇抜なアイデアを好む傾向が見受けられる。ならば観光事業も手掛ける両備グループに、東山峠旧道の在りし日の姿を知らしめ、T型フォードによる旧道経由の乗合自動車復活計画に食指が動くかも知れない。

チャギントンは採算度外視であろうから、観光業という立て付けであれば赤字垂れ流しでも、あの親子なら面白がって乗ってくるかも知れない。ただ、B塾系の令嬢相手となると正直厳しい。毎月末の支払いに追われるガッキーとのジリ貧生活と、お金には一生困らないB塾との優雅でリッチな贅沢三昧。

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◆障害となる東山公園を避けるように際を這い進む小径

君たちはどう生きるか?う〜ん、ごめんけどジリ貧で。現状維持とも言うが、一億総中流からの地盤沈下が著しく、相対的に梲の上がらぬ道路愛好家も居心地は悪くない。一瞬両備HDへの逆玉を夢見るも、やはり現実逃避は良くない。

とはいえ公共交通への関心が人一倍高い両備グループのツートップは無視出来んのジャマイカ?自身のルーツが凝縮された当レポートを。はっきり言ってここまでは単なる序章に過ぎない。交通意識高い系の本番はここからと言っても過言ではない。

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