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教育委員会が贈る歴史の道調査報告書、その傑作を補完して有り余る佳作、歴史の道踏査報告書〜古老の証言集〜 |
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トップ>旧道>北海道>チャシ峠 |
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チャシ峠(6) ★★★★ |
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チャシ峠(ちゃしとうげ)の取扱説明書 猿留山道及び雷電山道と並び蝦夷地三大難所に数えられる礼文華山道。その完全制覇を試みるにあたり外せない区間がある。それがチャシ峠だ。恐らくドライバーの十中八九は現場が峠越えである事実に気付いている。しかしそこに峠名を配した地図は皆無に等しく、その他諸々の書物に於いても完全スルーを決めている為、一般にチャシ峠が公然と語れる事は無い。しかしこの峠抜きに礼文華山道は語れない。道路・鉄道共に難所の痕跡は随所に垣間見られ、長大山道の一角を成す難コースという現実を認めざるを得ない。現場は一時代前の北海道の道路事情を今に伝える格好の舞台で、礼文華峠と大岸峠の中継ぎというよりもチャシ峠そのものが主役級の逸材で、この報告書によって我々はチャシ峠がけして脇役でない事を強く意識するだろう。 |
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◆隧道からクランクにて軌道修正する旧国道 隧道を潜り抜けると正面には白い砂浜と入江が広がる。海上へのダイブを避けるため右斜め45度に舵を切り、砂浜と陸地の境界線付近で左斜め45度にて軌道修正し、小さな橋でチャス川を一跨ぎする。これが一時代前の道道608号線もとい旧国道の軌道である。 今日の道道はトンネルの前後が同一線上にあり、東西どちらからも対向の様子がはっきりと見てとれる。一時代前の路もそうしたかったのであろうが、一時的に海上側へと膨らむクランクでかわさざるを得ず、結果非常に見通しの良くない線形になっており、幅員の狭さも手伝って走り難い事この上ない。 |
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◆短橋梁に備わる銘板には岩見橋と刷られている この路線が道道に降格して以降ならまだしも、唯一無二の生命線であった時代は、橋を渡った直後に穴を開けておけば、ドライバーはどんなに救われた事か知れない。チャス川を跨ぐ小さな橋には奇跡的に銘板が掲げられ、元国道の橋が岩見橋であると訴えている。 竣工は平成元年12月20日となっていて、四半世紀超の経年劣化と常に潮風に曝されていた塩害を考慮すれば、すっかり錆び付いて今日明日にもガードレールが脱落しそうな勢いに違和感はない。ただ少々気になるのは銘板に記された改修年で、新旧道切り替えの8年前となっている。 |
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◆旧橋の竣工年は平成元年12月20日 一世代前の岩見橋は老朽化により現在の橋へと架け替えられた。もしその橋があと十年弱持ち堪えたならば現在のチャス橋のみの整備で済んだ訳で、車道橋としての本来の用を成さない橋に対し無駄な費用を拠出する必要は無かったのではないかと思う反面、こうも考えられるのである。 もし旧岩見橋が騙し騙し供用され平成8年の新旧切替時まで踏み止まっていたならば、今頃は本体が土台諸共崩れ去り、橋跡だけが辛うじて確認出来る程度に過ぎなかったのではないかと。勿論銘板は流失し、橋名も竣工年も不明となっていた可能性は大いに有り得る。 |
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◆突貫で拵えたかの如し仮設橋の様相を呈す岩見橋 平成の黎明期にこれ以上の継続使用は危険と判断され、正しい施工が行われたからこそ旧橋が今日もそこに踏ん張っていられるという見方も出来る。抜本的な改修か否かは定かでないが、取って付けた様なガードレールを欄干に見立て、一応真っ当な橋のように魅せてはいるが、擬い物感は否めない。 耐久性に問題がある為改修はした。但し施工は必要最低限に留め見栄えも考慮しなかった。現在の橋と見比べるべくもなく、旧橋のみずぼらしさは半端無い。停車場で例えるとホームに貨車を置いて待合所とするようなもので、後世に残る立派な建造物を拵えようとする気はさらさらない。 |
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◆岩見橋よりも先の旧道にはセンターラインが認められる そう考えると平成初頭には計画されていたであろう新道への切り替えを考慮し、短命に終わっても良い繋ぎ的役割、分かり易く言えば仮橋のようなものであったとすれば頷ける。旧橋のヤル気の無さは数年持ち堪えれば良い突貫仕様にある。そう思えば手抜き工事っぽい醜態も納得が行く。 兎にも角にも旧橋は旧規格に合わせる形で架橋され、今この瞬間も落橋せずに原形を留めている。平成産しかも突貫の仮設仕様であるから、全く面白味に欠ける道路遺構と言っても差し支えない。ところが別の角度から見た場合、旧岩見橋の存在意義は計り知れないものがある。 |
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◆二車線の一部が階段によって潰されている 国道時代の橋が岩見橋であるならば、現在の橋は新岩見橋、或いは旧名を踏襲して岩見橋とするのが自然だ。しかし新橋の銘板には茶津橋と掲げられている。旧道が岩見橋で新道が茶津橋、ここでひとつの疑問が浮かぶ。何故新旧橋梁で全く異なる名称を冠したのかと。 それまで僕はほぼ無意識にこう思っていた。現在のカムイチャシトンネルに対する旧トンネルは、カムイチャシ隧道もしくはチャシ隧道ではないかと。旧隧道には銘板がないので適当且つ勝手に解釈していたが、気になったので道路トンネル大鑑の巻末リストを開いてみた。すると驚愕の事実が・・・ |
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◆広角のV字を成す稜線のボトムに穿たれた隧道が峠の証 無い、ナインダーゼット!トンネルは実在する。しかし紙面には未掲載となっている。リスト漏れの理由は単純で、建設省のリストアップと新旧国道の切替時期が重なった際の凡ミスだ。それよりも見てくれ、背後のピリカノカカムイチャシの全貌を。 海上に迫り出す岩塊は広角のV字で跳ね上がり、そのボトムに狙いを定め旧隧道は穿たれている。稜線の窪みに的を絞り風穴をあける手法、まさにこれこそが峠の峠たる所以ではないか。僕の中でチャシ峠区の存在はほぼ決定的なものとなった。 チャシ峠7へ進む チャシ峠5へ戻る |