教育委員会が贈る歴史の道調査報告書、その傑作を補完して有り余る佳作、歴史の道踏査報告書〜古老の証言集〜

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大岸峠(1)

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大岸峠(おふけしとうげ)の取扱説明書

北海道新幹線開業のニュースが世間の耳目を集めているが、JR北海道が入念な最終チェックをしている時分に、僕は最初で最後の一大プロジェクトに取り組んでいた。猿留山道及び雷電山道と並び蝦夷地三大難所に数えられる礼文華山道の完全制覇である。単車による走破、それも豊浦から長万部まで全て旧道を伝い、しかも半日で一気に駆け抜けるという壮大且つ無謀な試みで、計画の段階で大岸⇔豊浦間が最大の懸案事項と目された。海のものとも山のものとも分からぬ未踏区は、難易度は高いが攻略出来なくはない。出足平峠・豊浜洞・湯内峠の長大山道以来の大長編スペクタクル第一弾、オフケシ峠の衝撃・今宵解禁。尚今度こそR8での峠越えを立証すべく最善を尽くす。下町ロケットアウディ計画トラストミー編、始まります。

 

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◆豊浦市街地の外れに位置する道の駅とようらが起点

道の駅とようらの朝は早い。(←どこも同じだっつーの)水面下ではニセコ・倶知安・小樽連合VS室蘭・苫小牧・千歳連合の壮絶な鍔迫り合いの末に、前者に覇権が奪われた悲壮感はまだこの地に伝播していないようだ。始めからそのような駆け引きが無かったかの如し、いつもと変わらぬ静けさが漂っている。

観光色の強い北回りルートがビジネス色の濃い南回りルートを上回ったのは、時の政権による観光立国宣言が強く影響しているのは間違いない。東京オリンピックの10年後に外国人観光客年間6000万人を掲げた政府の指針は、将来の不安を払拭し再び日本人を奮い立たせる明確な動機付けになるだろう。

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◆道道702号美和豊浦停車場線と国道37号線との交点

様々な問題を内包する波乱含みの政策ではあるが、資源のない国家としては正しい選択肢と思うのは僕だけではあるまい。タラ・レバを言っても仕方ないが田中角栄が存命であったならば、今頃は北海道新幹線が小樽まで到達し、東京五輪開催に札幌延伸が間に合っていたかも知れない。

半日あれば北の端からも南の端からも首都圏に乗り込める、角栄氏が描いた壮大なビジョンは、今この瞬間も粛々と途切れる事なく継続されている。彼のDNAは脈々と次の世代へと受け継がれているのだ。その証拠に北海道新幹線の旭川延伸も至って真面目に検討されている。

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◆豊浦市街地の外れに佇む昭和の香り漂う豊浦隧道

また角栄氏の主張は東京一極集中のみならず、地方都市同士を結ぶネットワーク化が肝で、今回は覇権を譲った噴火湾ルートの連合体も、氏の描いた都市間高速ネットワーク構想に則り、北海道新幹線南回りルートの着工を虎視眈々と狙っている。僕等の目の黒いうちにそれは現実のものとなるかも知れない。

借金のツケを後世に回すだけの愚策との見方もあるが、飛行機の墜落リスクや高速道路での事故率に比すると、新幹線の安全性は突出しており他の追随を許さない。やはり長距離移動は新幹線に限る。どうしても自力で高速移動をしなければならない場合はR8、これはセレブの常識である。

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◆昭和38年竣工を知らせる豊浦隧道の錆びた銘板

世間一般が北海道新幹線の開業で盛り上がり、札幌延伸に異議を唱えている最中、秘密裏に遂行される計画がある事を世の中のほとんどの人が知らない。

世の中を〜こ・の・世の中、ウヒャ〜ン、あーあーあー!

何だか泣きたくなるくらいに世間一般と隔絶されたプロジェクトであるが、いつか誰かの役に立つと言い聞かせいつも通り粛々と実行に移す。取説にある通り今回の計画は全道に激震が走る壮大且つ大胆なイベントで、危険手当込みでキャッシュで1000万積まれても首を縦に振らない生涯一度の挑戦である。

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◆昭和中期の量産型らしく洞内には歩道が見当たらない

但しもう200万盛れば考えなくもない(結局やるんかい!)が、二度と同じ道を通らないポリシーがあるから今回限りの公算が大だ。現場は長万部(静狩)から豊浦にかけての噴火湾ルートで、言わずと知れた国道37号線の旧道を一気に駆け抜ける一発勝負の斬新な企画である。

一本の旧廃道を完結させてから次の舞台へ移るのが定石ではあるが、複数の舞台を同時並行的に推し進め、連鎖的に踏査する手法が無い訳ではなかった。目立ったところでは湯内峠・豊浜古洞・出足平峠の三部作が記憶に新しい。点ではなく線で連なる難所を克服しようという皮算用だ。

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◆大型トレーラーが来ると厳しい一時代前の狭い規格

リスクとしてはどれかひとつでも難攻不落の峠があれば成立し得ない点が挙げられる。本件に於いては礼文華峠が既に攻略済で、加え静狩峠の片側を掌握しているという強みがある。長万部と豊浦の間に立ちはだかる難所の実に半分を予め把握している点は大きい。

しかしながら太櫓越のように過去の経験が全く意味を成さないという悲劇も起こり得る訳で、落橋等による通行不能も含め完走が叶う保証はどこにもない。特に問題なのが謎のベールに包まれる大岸⇔豊浦間の難所で、全道程が未知なる峠道の攻略が最大の懸案である事は間違いない。

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◆これより連続するトンネルの一番バッター高岡第一隧道

何せ旧道がどこをどう伝っているのか今の今まで全くと言っていいほど把握出来ていないのだ。実際にそのルートを辿った先駆者の報告書は皆無に等しく、また勢いで突っ込んでみたという類の話を聞いた事も無ければ見た例もない。そりゃそうだ、現道からは旧道の片鱗を含む一切の情報が得られないのだから。

だがトンネルだらけで構成される現道を見過ごす訳にはいかない。そこには確実に現ルートに干渉しない旧道筋が存在する。その仮説を元に検証すべく調査に入るも、その時点で僕は現場がオフケシ峠と命名されている事実にまだ気付いていない。

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