教育委員会が贈る歴史の道調査報告書、その傑作を補完して有り余る佳作、歴史の道踏査報告書〜古老の証言集〜

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花石峠(1)

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花石峠(はないしとうげ)の取扱説明書

花石と聞いてすぐに北海道は道南の今金町のあの花石か!と思い浮かぶとしたら、余程の北海道通か当地生え抜きの人間に限られる。しかも花石峠の存在自体を認識しているとなると、もうその時点で廃道コンシェルジュを名乗ってもいい。何せ廃道仙人掘淳一氏率いるコンターサークルSが徒歩による縦走にも拘らず断念せざるを得なかった重鎮御墨付の強烈廃道である。廃道スナイパーの狙撃対象としては申し分ない格好の題材だ。現状を想像するだけでも武者震いするが、ターゲットは美利河峠の終点である花石郵便局から目と鼻の先に位置する。美利河峠の今昔を白日の下に晒した今、返す刀で花石峠を攻略しない手はない。美利河と花石の二部構成による後編の作戦名は、下町ロケットガウディ編に便乗しアウディ計画とする。アウディR8でどこまで突っ込めるのか?その辺も見極めつつ全貌を解明すべく侵攻を開始する。

 

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◆瀬棚線跡と花石駅を改修して敷設した新旧国道の交点

美利河から信号機一つ無い豪快な快走路を下ってくると、中里地区への案内を掲げる青看に出くわす。大方の車両はそれを無視して勢いよく通り過ぎて行くが、路線バスを筆頭に少なからず一定の車両がこの交点で右左折している。案内板は中里へ通じる支線の如し表記であるが、多少事実とは異なる。

現場の交点はK字ともH字ともとれる形状で、並走する二本の路線が交わっている。本来であれば干渉しない二つの道を無理矢理繋げた結果、何だかアレな線形になってしまっている。少々違和感のあるそれは、鉄道の跡地をそっくりそのまま新国道用地として二次利用した事に起因する。

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◆瀬棚線跡を思いっきり踏襲し峠に至る新国道花石道路

花石からトンネルを潜り北住吉へ通じる現在の快走路は、瀬棚線跡地を利用して敷設したものであると原住民は語る。つまり国道230号線の北住吉⇔花石間は瀬棚線を踏襲しているのだと。花石の婆ちゃんは花石駅がK字ともH字ともとれる交点付近にあったと訴える。

だとすれば本来は交わらない並走する二つの路線が、僅か20m前後まで最接近したところで短絡路によって強引に結び付けられたかの様な格好も頷ける。現国道筋は元々鉄路で、交点付近には駅舎があった。連絡路は駅前広場への引込線であったと考えれば何等違和感はない。

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◆花石新道のサミットはトンネルでぶち抜いている

婆ちゃん談によると元々花石郵便局はもう少し駅寄りにあったといい、現在の場所に移ったのは二代目の国道の誕生時、即ち後志利別川の右岸道路が成立した頃であると語る。瀬棚線は昭和4年末に花石⇔国縫間が先行開業している。一方二代目の国道は昭和36、7年に開通している。

従って駅前旅館を筆頭に商店等が密集し賑わいをみせる停車場に接近する二代目国道筋の線形は至極自然で、新旧国道を半ば強引に結び付けたかのような花石の交点は、事実を知れば些かも矛盾は生じない。花石より瀬棚方面への踏襲路は、美利河界隈の快走路を凌駕する軽快さを誇る

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◆洞内は大型車同士の相互通行を許し歩道まで備わる

中でもトンネルをぶち抜いて瞬間移動を果たす峠越えは圧巻の一言だ。現場に至る導線も高速道路に比肩する優良コースで、80キロオーバーで豪快に駆け抜けて行く車両も少なくない。それを知ってか知らずかパトカーが坑口脇に身構え、違反車両を検挙せんと虎視眈々と狙っている。

洞内は大型車の相互通行を許す上に歩道まで備わる豪華版で、チャリダーや徒歩ダーにとっては有難い仕様となっている。前身となるのは瀬棚線の花石隧道で、それを拡張する形で造成した為、鉄道隧道はとっくの昔に粉砕している。瀬棚線跡を踏襲する案は地元の政治家が主導したのだと原住民は語る。

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◆峠からは幾つもの高架橋で徐々に高度を下げる

昭和62年に廃止されて以降しばらくは手付かずのまま放置されていたが、平成になって渡島半島横断道路計画が持ち上がり、その一環として瀬棚線の花石峠がクローズアップされたという。新道の敷設にあたり土地の買収等で頓挫するケースは少なくない。本件は地権者たるJRとの協議のみで済むから交渉は楽だ。

それに美利河隧道同様良からぬ噂に尾鰭が付き、肝試し等で訪れる者も少なからずいたはずで、そういった輩を排除する為に金網フェンス等を設けるのも手間で、後々の管理を思えば二束三文で手放した可能性は十分有り得る。1円でも安く取得したいと思っている購入側の思惑と利害は完全に一致している。

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◆清流橋を境に田園地帯が広がる横這いの平坦路になる

計画がとんとん拍子に進んだか否かは定かでないが、現にこうして北住吉と花石の間を僅か5分程度で駆け抜けられるという現実がある。トンネル自体は平成10年に竣工しており、同12年には一般供用を開始している。北住吉⇔花石間は花石道路と称され、将来の渡島半島横断道路の一役を担う事になっている。

十余年の空白期間を経て瀬棚線の花石峠は、国道230号線のバイパスとして見事復活を遂げた。それでも原住民は素直には喜べないと肩を落とす。というのも瀬棚⇔国縫間を全線高規格道路で結ばんと奔走した地元の政治家が選挙で落選し、全通の見込みはなく横断道路の成立は絶望視されているからだ。

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◆かつて北住吉駅が置かれていた新旧国道のT字路

それでも僕は言いたい、花石と北住吉の間が5分で行き来出来るようになったのは大いなる前進ではないかと。これより辿る旧国道筋は半端無い大迂回路となっている。後志利別川に沿う旧道は無駄に時間を浪費する最悪のコース設定となっている。

それに比べれば花石道路は高速道路に比肩する快走路で、後志利別川沿いをのらりくらりと伝っていた時代に比べれば天と地の差がある。鉄道というインフラを失った以上、代替案として地域高規格道路を要望するのも分からなくはないが、花石新道の成立はあなた方が思う以上に革命的であると僕は断言する。

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