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教育委員会が贈る歴史の道調査報告書、その傑作を補完して有り余る佳作、歴史の道踏査報告書〜古老の証言集〜 |
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多和山峠(10) ★★★ |
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多和山峠(たわやまとうげ)の取扱説明書 瀬戸内と日本海を結ぶ地味な国道313号線の道中で、最難所と言えば犬挟峠で異論はないと思われるが、それと双璧を成すとされる難所がある。それが真庭市と有漢町の市町界を隔てる多和山峠だ。僕は最近まで気付かなかった、峠名の多和が乢とイコールである事に。平仮名表記にして初めてそれを意識する事になるが、それが単なる思い込みでない事実を後に知る事となる。多和山峠は古くは峠山峠と表記され、上から読んでも山本山、下から読んでも山本山のキャッチフレーズ同様、上から読んでも下から読んでも峠山峠である事が調査過程で判明する。この衝撃の事実はロイター通信を介しアメリカ全土に発信され、全米を震撼させた。今でこそ誰もが発狂せずに済むように多和の文字が宛がわれているが、古来多和山峠は峠山峠が正式名称であり、漢字では誤魔化せても平仮名では誤魔化せない。たわやまとうげは読んで字の如し峠&山&峠と山深さを前面に押し出しており、多和山峠表記ではけして読み解けない難所である事を、昔の人は身を以て知っていたのだ。果たして峠を連呼する程の難所とはどのようなものなのか?その実態を白日の下に晒そう。 |
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◆下りに転じた瞬間のみ山道は二車線幅と広い この峠道には国道時代の付帯設備が数多く残るが、おにぎりだけは綺麗さっぱり撤去されていて、皆無に等しい交通量と相俟って、現場には思いっきり旧道臭が漂っている。と思ったら峠の青看にはおにぎりが健在で、あれだけをみると今も峠道が国道なのかと勘違いする者がいてもおかしくはない。 事実、新道が開通した後も旧道筋が国道を名乗り続ける事例は少なくない。信号だらけで遅々として進まぬ2号線と、姫路・加古川の2号バイパスがその好例だ。ここ多和山峠も新旧道が共存する道なのかと思いきや、今や片方(鞍跨ぎの路)は完全に機能を失っている。 |
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◆一瞬膨らんだ道幅もあっという間に1.5車線に狭まる 新旧道が同じ路線名を名乗り共存する場合は、一方が生活道路で、もう一方がバイパスであるのが通例だ。多和山峠もそれに該当するが、旧道の使用頻度が低過ぎて共存は成立し得ない。極端な事を言えば旧道が無くなって困る人は、ほんの一握りの者でしかない。 多和山トンネルを含む新道は難所を避けるバイパスで、それに対して従来の山道が旧道である訳だが、如何せん旧道筋には恩恵に授かれる人家そのものが見当たらない。頂上付近には数軒の人家が認められるが、北房側の登り途中に人家は一軒も存在しないのだ。 |
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◆いつ朽ちても不思議でない国道時代の警戒標識 道中には二軒の資材置き場と、鉱山もしくは採石場の跡地が見受けられるが、何等かの事情で旧道の北房側が不通になったとしても、困るのはたった二つの法人のみで、一般の個人に関しては誰一人困らないというのが現実である。仮に旧道が崩壊し片峠になっても、沿線住民にとっては痛くも痒くもない。 それは現場の状況を踏まえた上での考察というよりも、純然たる事実としてそこにある。切り通しを抜けた先の有漢町側にはパッと見で5軒ほどの人家が建ち並び、洗濯物等から今も少なからず頂上付近での人々の暮らしぶりが窺える。彼等がどこをどう伝って行き来しているのかもはっきりとしている。 |
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◆旧国道筋と訴える岡山県の文字が躍るデリネーター 頂上付近に暮らす人々のほぼ全てが、峠道の北房側を完全にスルーしている。あたかも北房へ抜ける山道が不成立であるかの如し勢いで無視し、車両の出入りは有漢側に一極集中している。これが僅か15分程度の交通量調査から導き出した僕の結論である。 何故そうなってしまったのか?その答えは有漢側の道路状況にある。切り通しを抜けた直後の三差路を右が旧国道で、山道の続きは下りに転じた直後のみ二車線幅と潤沢だが、それは長くは続かずすぐに4m幅へと狭まる。しかし200mと走らぬうちに視界が前方が大きく開ける。 |
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◆やがて二車線の快走路に吸収される旧国道 余りにも開放的な空間に違和感を禁じ得ないが、旧道筋は二車線の快走路に吸収されて本来の姿を掻き消してしまう。糞狭い旧道がぶつかった先の路は、右も左も大型車同士の擦れ違いを許す快走路で、一瞬旧道筋を見失ったのかと三差路まで戻らねばという衝動に駆られる。 しかし三差路を左の路は青看に町道と刷られているし、快走路とぶつかる交点付近にも旧道らしき道筋は認められない。市町界を跨いだのだから下りに転じねば嘘だ。現場の下り坂は二車線の快走路のみである。となると快走路は旧道を上書きしたものである可能性が高い。 |
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◆国道時代の面影は微塵もない拡張された旧国道筋 実際にその通りで、パッと見は別路線に映る二車線の快走路が、実は旧国道を改良したものであるという。交点の前後で規格の落差が余りにも激しく、同一路線と自身の中で消化するのに多少の時間を要するが、峠の今昔を知る現地住民がそう言うのだから納得するしかない。 単に4m幅の狭隘路が膨らんだだけなら、下界から改修の手が伸びてきたのだろうとの察しがつく。しかし快走路は旧国道筋とは別路線と言わんばかりの勢いで東へと延びている。僕の見た限りでは、ほぼ全ての車両が旧国道筋を無視して、快走路を俊敏に駆け抜けて行く。 |
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◆通行車両の多くが旧国道とは気付かぬ今時の快走路 まるで多和山峠など知らぬ存ぜぬといった感じで、二車線の快走路を上下線共に車両の如何を問わず爆走している。恐らくドライバー&ライダーの多くは気付いていない。一部が国道313号線の旧道である事に。 大改修を受けた山道の続きは、旧国道らしさの欠片もない。広域農道を彷彿とさせる近代的な路は、かつて多くの者が喘ぎ苦しんだ悲壮感とは無縁で、クールで無機質な快走路は全く面白味に欠ける。 多和山峠11へ進む 多和山峠9へ戻る |